新型コロナウイルス禍で日々の暮らしや学校生活の変容を迫られた東北の学生たちが、自らの葛藤や悩みを芸術作品に昇華させている。
初の緊急事態宣言が出た2020年春以降、東北の大学や高校でも休校やリモート授業などが実施され、学生らの生活は一変した。アパートなど自室にこもりがちになり、アルバイトやサークル活動、友人との何げない語らいなど、入学前に思い描いていた日常とはほど遠い毎日が続く。
自分たちは一体、何をどうすればいいのか―。芸術分野で活動する学生らは、特異な環境下にある自らの心と体に生じた違和感に正面から向き合い、作品にしようと試みた。
油彩画、書画、ドキュメンタリー映像。作品はどれも制作の過程で自分自身を見つめ直し、それぞれがたどり着いた現時点での「答え」だ。同時に、未曽有の困難を乗り越えようと奮闘する自身の成長記録にもなっている。
(報道部・武田俊郎)
<表す>岩手大人文社会学部で書を学ぶ3年高橋なるみさん(右)と千田愛梨さんは、書画でコロナ禍を表現した。
リモート授業が続いた2020年。書道の練習を自宅でひたすら続ける毎日で感じたのは、むなしさだった。パソコンの画面越しに見る授業。作品を発表する場もない。「何を書いても手首の運動にしか感じられなかった」(高橋さん)。だが、そうした時だからこそ書というものが自分の心と密接につながり、伝える相手がいてこそ成立することに気付いた。
コロナにより日常生活から自分たちが「淘汰(とうた)」されていくのではないかという不安。そんなネガティブな感情を「唾棄」したい―。
こんな自分たちの心の内を書に映し出した。ビリビリに引き裂いた裏打ち紙の上に、麻紙に記した書を張り付け、荒々しい感情が何度も去来した重層的な心のありようを表現。コロナ禍の元凶である不気味なウイルス粒子も墨画にした。
作品は9月下旬から10月上旬に学内で開催する「二人展」で公開する。
<残す>朝起きてすぐ、小学生の弟が何の疑問もなく検温し、学校に提出する一覧表に体温を書き記す。ランドセルの横にはマスクと消毒スプレーがある。
いつの間にか当たり前になった光景を油彩画で表現したのは、宮城野高(仙台市宮城野区)美術科3年の小野詞誉さん(17)だ。
コロナ禍が終息した時、「当時の肌感覚はどうだったのか」と振り返る時が来るかもしれない。その時のためにも「今、この日常を記録しておかなければ」と思い立った。
「新しい習慣」と題した作品は、2020年度の宮城県高校美術展で優秀賞を受賞。現在、ホテル白萩(青葉区)の階段踊り場に展示されている。
<撮る>リモート授業で友人とも会えず、課外活動も自粛を迫られる。思い描いていたような学生生活とは全くかけ離れた毎日を強いられた2020年。尚絅学院大(名取市)のゼミで映像制作を学ぶ女子学生6人はコロナ下で悩み、葛藤する自分たちの1年をビデオカメラで撮影し、21分のドキュメンタリー作品に仕上げた。
作品の後半、沈みがちだった彼女たちの表情が次第に変化する。「はっきりした枠に収まる人なんていないし、みんな曖昧でグレーな存在なんだよ」。LGBTQ(性的少数者)の人たちが集まる仙台市若林区のバーを取材した4年の黒田晴香さん(22)が、店のオーナーが発した言葉に心を動かされる。
「誰かが決めた『こうあるべきだ』という枠や、自分が思い描く固定観念に縛られ、窮屈な思いをする必要はない」。撮影を通して自分の心も見つめ続けた黒田さんは気付く。吹っ切れたような表情になった他のゼミ生も、進路選びなどそれぞれの課題の解決策を手探りで見いだしていく。
「私たちの2020年~コロナ禍の小さな記録~」と題した作品は「東北映像フェスティバル2021映像コンテスト」の学生部門で奨励賞を受賞。動画投稿サイトYouTubeでも公開している。
<結ぶ>コロナが障壁となり、人と人との交流が制限されていることから、東北芸工大(山形市)大学院2年の下田実来さん(24)は絵画作品を使ったプロジェクトを企画した。
山形県内を流れる最上川など、これまで見てきた水辺からヒントを得て制作を始めた。人の往来を阻む「障壁」の位置付けで川を描くつもりだったが、ある日、気付いた。
「川は海につながり、あらゆる国に通じる。私が障壁だと思っていた水は、実は人と人を結び付ける媒体なのかもしれない」。そして、水をテーマにした絵画を使い、人と人を結ぶ仕掛けを思い立った。
下田さんが考えた仕掛けは、こうだ。水辺をモチーフにキャンバス地に描いた絵をはがき大に切り抜き、メッセージを書いて返送してもらう。返送されたはがきを再びキャンバス地に糸で結び付け、最終的にモザイク画のように仕上げる。
「人流抑制の中、絵に動いてもらい、人々の思いを集めようと考えた」と下田さんは言う。はがきには「大切な人に会えていますか?」と質問を書き入れた。返信には「NO!」「大切な人ができるほどの大学生活を送れていない」などの切実な言葉も連なるが、「はがきを介して新たなつながりが生まれている」と手応えを感じている。
本年度内の完成を目指す下田さん。「コロナが落ち着いたら、プロジェクトの賛同者に実際に完成作品を見てもらいたい」と期待する。
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