<仙台いやすこ歩き>(147)糀藍/味わい増す 万能調味料

 急激に変わる街並みをバスから眺めていたら、ぼんやり頭に飛び込んできたひと文字「糀(こうじ)」。ムムッと見れば、店頭にはフルーツジュースののぼりが。

 いやすこの想像力は、ただただおいしい方へと向かう。そんなわけで早速2人がやってきたのは、最近まで東北大農学部だった場所の東側に出現した「糀 藍」(仙台市青葉区上杉)である。

 お洒落(しゃれ)なカフェというよりも、オープンで親しみやすい雰囲気のお店で、カウンター脇には糀商品が数々並び、壁にはランチメニューが写真付きで貼られている。まずは女将(おかみ)の浅野美子さん(58)に話を伺った。

 「料理好きが高じて家庭料理をしっかり伝えたいと思ううちに、ここへきていました」と、まるで30代と見まがう肌で笑顔の美しい浅野さんは話してくれる。3人の男の子を育てる中、子どもたちの食べ物にうま味調味料や白砂糖を使いたくないという思いから、糀を作って料理するように。やがて成長した息子さんたちのお嫁さんに教えていたら、もっと多くの人に教えたらと勧められ話は広がっていく。

 「虹の丘(泉区)の自宅の工場で糀を作り、併せて糀を生かす自宅カフェを開いたのは50歳を過ぎてからなんです」。糀という日本伝統の発酵食文化を通じた食事の大切さを、もっと多くのお母さんたちに伝えたいと、今年6月に自宅カフェは閉じ、ここにお店をオープンさせた。「糀が優れものなので、料理が苦手な人ほど使ってもらえると思うんですよ」

 商品には甘糀(米と糀だけで作られた糀)、醤油(しょうゆ)糀(甘糀に醤油を加えたもの)、塩糀(甘糀に塩を加えたもの)、糀だれ(醤油糀に甘糀を加えたもの)など。調理例としては、豚肉と玉ネギを塩糀に数時間漬け、それを醤油糀だれで煮ると、ごはんにぴったりだそう。つい最近もそうした糀料理を息子さん、お嫁さん、そしてお孫さん7人と囲んだという。なんてにぎやかな食卓風景。その中で浅野さんは全員から「おかあ」と呼ばれているというから、ますます幸せな家族時間が想像される。

 浅野さんは「糀カフェ」の漢字についても教えてくれた。こうじには麦こうじや豆こうじもあって、総じて「麹」と書くが、ここでは米を原料にしているので「糀」の字を用いたという。浅野さんが作る糀は、大崎市三本木の農家さんのお米を使って作られ、火入れもしない生きた糀である。

 お楽しみの試食。まず甘糀からで、自然の甘みってこんなにもおいしいんだと舌もうっとり。そしてフルーツジュース。甘糀1・豆乳1・フルーツ1の割合で作られる。何種類かある中から今回は宮城県亘理町の農家さんのイチゴのジュースをいただく。口に含んだ途端、「わっ、これ飲み物じゃない、食べ物」と2人とも声に出してしまうほど、存在感のある自然派スイーツ。

 帰ると早速、糀料理のスタート。魚にも、肉にも、さらに野菜にも使ってみると、味に深みが増して全てがおいしく食べやすくなる。しかも時短調理ができるのだから、糀はすごい! 甘糀はそのまま甘酒として飲むと、夏バテの体にしっかり届くのも実感できる。

おぼえがき/栄養価高く 美容にも効果

 米こうじ、つまり「糀」は、蒸し米にこうじ菌をつけて繁殖させ、糖化させたものである。こうじは発酵食品。発酵とは、微生物、菌の働きによって独特のうまみや香りが生まれ、食材を味わい深くおいしくするほか、栄養価も上がり、さらに消化しやすく、保存性もよくなるという特徴を持つ。日本で昔から安全な菌を選別して育ててきたのがこうじ菌で、日本酒、みそ、醤油などが作られてきた。他に納豆や漬物、さらに各地の郷土食にも発酵食品は多く、その多様性から、日本は発酵食品の宝庫といわれている。

 日本の湿度と気温が発酵に適していたこと、そしてこうじ菌を上手に活用してきたことが、日本人の健康に寄与し、食文化を豊かにしてきたのだ。

 発酵食品に含まれる微生物は、腸内の善玉菌を活性化し、腸をよく働かせることで栄養の吸収を高め、血液の質や流れも良くする。細胞の新陳代謝までスムーズになる。これが健康、美容、アンチエイジングの要とされている。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。

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仙台いやすこ歩き

土地にはその土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター・みうらうみさんとイラストレーター・本郷けい子さんが仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。

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