社説(9/1):防災の日に考える/避難情報の確認と活用を

 災害時に市町村が出していた避難勧告を廃止し、避難指示に一本化した改正災害対策基本法が5月に施行されてから、3カ月がたった。

 この間、7月は静岡県熱海市、8月は西日本を中心に大雨による被害が相次ぎ、各地で犠牲者が出た。

 水害が心配な季節はしばらく続く。避難情報の変更は地域に周知されただろうか。きょう9月1日は防災の日。避難情報の意味を再確認し、次の災害に備えたい。

 7月の大雨で大規模な土石流災害が起きた熱海市は当時、避難指示を出さなかった。雨脚が弱まるとみて、発表を見送ったという。

 近隣には避難指示を発表した自治体もあった。ただし、実際に避難した住民は少数で、判断や運用の難しさが改めて浮き彫りになった。

 今回の改正の背景にあるのは、逃げ遅れの防止だ。避難勧告も移動開始の合図だったが、より危険性が高い状況で出される避難指示まで様子を見るケースが目立ち、逃げ遅れの一因と言われてきた。

 改正後、避難指示は従来の避難勧告の段階で発表され、「危険な場所から全員避難」を意味する。まずはハザードマップで自宅周辺の災害リスクを調べてほしい。立地、建物の条件、浸水深によっては、屋内での安全確保も選択肢になり得る。

 防災の言葉や制度は近年、たびたび見直されてきた。2016年の台風10号では、岩手県岩泉町の高齢者施設で「避難準備情報」の理解不足から避難が遅れ、9人が犠牲になった。この反省から17年に名称が「避難準備・高齢者等避難開始」に変わった。

 18年に232人が犠牲になた西日本豪雨を受け、国は避難のタイミングを示すため、19年に危険度に応じた5段階の警戒レベルを導入した。

 今回の改正では勧告、指示の一本化のほか、警戒レベル3の「避難準備・高齢者等避難開始」が「高齢者等避難」という表現になった。ただし、高齢者以外の人も必要に応じて自主的に避難するタイミングとも定めている。高齢者だけに向けた情報と早合点してはいけない。

 いずれも災害の教訓を踏まえて危機感を伝え、身を守る行動を促すための改善だが、変更すると定着に時間がかかるものだ。今回もどれだけ浸透しているかが気になる。

 避難情報を行動に結び付けるには、行政、消防団、住民が、防災の知識と危機感を共有することが重要になる。改正後だからこそ、行政はより一層、住民が情報を理解し、判断できるような広報活動や防災教育が求められる。

 高齢者等避難、避難指示が出たら、危険な場所にいる高齢者、住民は直ちに避難を始めてほしい。一方、発表前でも周囲に異変を感じたら、自らの判断で動く心構えをしておきたい。全ては身を守るタイミングを逃さないために。

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