社説(9/2):介護現場の人材不足/大幅な処遇改善が必要だ

 このままでは急増する介護需要に対し、人材の確保が追いつかない。コロナ禍で労働環境がさらに厳しくなっているだけに、大幅な処遇改善など抜本的な対策が不可欠だ。
 厚生労働省は、65歳以上の高齢者が3900万人を超える2040年度、介護職員が約69万人不足するとの推計を発表した。人口の3分の1超が高齢者となるのに伴って、約280万人の介護職員が必要となるが、現状は約211万人(19年度)にとどまる。
 高齢者福祉の現場は離職率の高さもあって、ただでさえ人手不足が常態化している。
 今年3月現在の有効求人倍率は全職業平均で1・02倍だったが、介護サービスは3・44倍。そんな中で40年までに必要な職員数を確保するには、毎年3300人程度ずつ職員を増やしていかなければならない計算になる。とても容易なことではない。
 介護職は勤務時間が不規則な上に力仕事が多い。日々変化する高齢者の心と体の状況に向き合わざるを得ず、精神的な負担も重い。
 人手が足りない現場では、1人当たりの負担が増し、さらに離職者が出る「負の連鎖」に陥りやすい。
 政府は他業種からの転職を促そうと、職業訓練の拡充や一定期間働けば返済が免除される支援金を設けるといった対策を進めているが、一時的に入職者を増やすだけでは問題は解決しない。
 将来にわたって持続可能なサービス提供体制を構築する上で最大の問題は、仕事の重要性にもかかわらず、それに見合う賃金水準になっていないことだ。
 介護職員の労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」の調査では、月給で勤める職員の19年の平均年収は約360万円で、全職業平均より100万円程度低い。
 国は介護報酬の処遇改善加算などで向上を図ってきたが、コロナの感染拡大で職員の心身の負担が増える中、まだまだ十分とは言えない。
 社会福祉振興・試験センターの昨年の調査では、資格を持ちながら離職している「潜在介護福祉士」のうち、介護・福祉職場への就業意向がある人は4割にとどまった。経験や資格を持つ担い手が職場に定着しなければ、専門性や技術の蓄積は進まず、サービスの質の向上も望めない。
 処遇改善のために介護報酬を引き上げるには、40歳以上が納める介護保険料や利用者の自己負担の増加が避けて通れない。ある程度の負担増はやむを得ないにしても、介護報酬とは別に、職員の生活と働き続ける意欲を支えるため公費を投入する仕組みを検討すべきだろう。
 現在提供されている介護サービスの質と量は、現場の職員の使命感に支えられ、辛うじて維持されているにすぎない。介護という仕事の尊さ、大変さに見合う賃金を早急に実現しなくてはなるまい。

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