【更新】コロナ飲み薬の開発急ピッチ、年内の処方も 東北医薬大・久下教授に聞く

 新型コロナウイルスの感染初期に、口から投与できる治療薬の開発が国内外で進む。早ければ年末から来年初めにも、国内の医療機関で処方される可能性がある。コロナの治療薬を研究する久下周佐(くげ・しゅうすけ)東北医科薬科大教授(微生物学)に経口薬の特徴や課題を聞いた。
(編集局コンテンツセンター・佐藤琢磨)

症状ないまま完治も可能

 開発が先行する主な製薬会社は、塩野義製薬(大阪市)とファイザー、メルク(ともに米国)、ロシュ(スイス)の4社。いずれも医師の診断で処方される経口治療薬で、感染直後からの軽症患者が対象だ。

 臨床試験(治験)は3段階(相)を踏む。塩野義製薬は28日、第1~2段階の「第1/2相」から第2~3段階の「第2/3相」に進んだと発表。ファイザーはすでに第2/3相治験中で、メルクとロシュは「第3相」と一歩先行する。

 塩野義製薬の抗ウイルス薬「S―217622(名称未定)」は、ウイルスが細胞内で増殖するために必要な酵素の働きを妨げる。今冬までに第2相の治験を終え、厚労省の条件付き早期承認制度を利用して年内の申請を目指すという。

 ファイザーの「PF―07321332(名称未定)」も塩野義製薬と同様の仕組み。3月から治験を始め、第2/3相の終了は早ければ10月を見込む。

 細胞内でウイルスの遺伝子が複製する働きを阻み、ウイルスの増殖を抑える「モルヌピラビル」を開発するのはメルク。最終段階の治験中で、年内にも米国などでの承認申請を見込む。

 ロシュは、傘下の米アテアがC型肝炎ウイルス治療薬として研究していた「AT―527(名称未定)」の転用を目指す。提携する中外製薬(東京)によると、22年に国内で申請、承認後は中外製薬が販売を担う予定だ。

 他の経口薬としては、エイズウイルス(HIV)の治療薬「ネルフィナビル」の効果を長崎大などが調べている。一部で話題となった駆虫薬「イベルメクチン」の製造元は、有効性の科学的根拠が存在しないと発表した。

2021年9月28日現在。申請から承認までの期間はおおむね1カ月程度。4社とも今冬にも供給できる可能性がある

ワクチン接種は欠かせず

 最大の課題である安全性について久下教授は、開発中の薬剤と類似した仕組みの抗ウイルス薬が、HIVやC型肝炎治療薬として実績があることから「問題はないだろう。治験でも重篤な副反応の報告はない」と説明する。ただし「多くの人が使い始めると、薬剤耐性ウイルスが出現する恐れもある」と注意を促す。

 新薬の開発期間は通常、基礎研究から10年以上かかるケースが多い。新型コロナでは2年程度と大幅に短縮されそうだ。コロナウイルスの一つで2003年に見つかった重症急性呼吸器症候群(SARS)の研究が転用されたこと、患者数が多く治験の効率が良いこと―が奏功したと久下教授は分析する。

 ワクチン導入までの経緯を踏まえて久下教授は、米国などで特例承認された1カ月後をめどに日本でも特例承認されると予想する。「最初は輸入頼りで供給量は多くないだろうが、ワクチンと比べれば早期に安定供給が可能だ。順調に進めば、年末から来年初めごろに国内でも処方が始まるのではないか」と期待する。

 陽性と分かった時点で服用することで、症状のないまま完治できる可能性もある「夢の薬」。今後は、発熱や頭痛といった副反応が報告されるワクチンも不要になるだろうか。しかし、久下教授はこう言ってくぎを刺す。

 「まだまだ変異株には懸念がある。変異株に対応した追加のワクチン接種と、感染初期に処方する経口薬、どちらも重要だ」

[くげ・しゅうすけ]1959年、埼玉県出身。東京大大学院薬学系研究科博士課程修了。北里大医学部や東大医科学研究所、東北大薬学部などを経て2010年から現職。専門は微生物学。
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