(71)満月や大人になってもついてくる/辻 征夫(1939~2000年)

 今日は十五夜。中秋の名月は眺められるだろうか。この句を読んで、幼い頃まんまるのお月さまが帰り道の角を曲がるたびに後ろにいるような気がしていたのを思い出した。そんな気持ちはいつの間にか忘れてしまっていた。大人になると、世界の見え方は凝り固まってしまってどうにも窮屈だ。しかし作者は、子どもの頃の満月への親しい感情や無垢(むく)な想像力を、大人になっても忘れていない。詩人とは、童心を生涯なくさない人である。『貨物船句集』より。
(永瀬十悟)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。

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