子育て環境の充実不可避(5)出生率<耕論・宮城知事選>

 村井嘉浩宮城県知事の任期満了(11月20日)まで、約2カ月。知事が力を入れた施策や課題は、4期16年でどう変遷したのか。秋の知事選を前に、230万人が暮らす県土を耕し、実り具合を確かめる。
(宮城県政取材班)

 「私の責任と言って間違いない」。石巻市で6月にあった講演で、村井嘉浩宮城県知事は2005年の就任以降、合計特殊出生率=?=が全国平均を下回り続ける状況を率直に反省した。

 県の合計特殊出生率の推移はグラフの通り。15年の1・36から急落し、20年は1・21と過去最低を更新。2年連続で全国最低の東京都に次ぐ低水準にあえぐ。

 国立社会保障・人口問題研究所は、全国的には出生率が最も高い30代女性が宮城で低いと分析する。19年の30代出生率は全国で最下位レベル。第1子の出産平均年齢(19年)は30・07歳で、全国平均(29・65歳)を上回った。

 東北大大学院の吉田浩教授(加齢経済学)は、類似点が多い広島県をモデルに社会経済指標を比較。子を持つ妻の就業率の低さなどを挙げ、「宮城では30代女性が就業と子育てを両立できる環境が整っていない。2人目を産める環境にないのでは」と指摘する。

 「なぜ宮城が低いのか理由が分からない」(担当者)と悩める県だが、本年度からようやく、子育て支援策を打ち出し始めた。

 明るい色彩の室内に、パソコンが置かれた四つの相談スペースが並ぶ。

 県は9月、「みやぎ結婚支援センター」を仙台市に開設した。AI(人工知能)を活用したマッチングシステムが目玉で、112問にも及ぶ価値観診断テストの回答に基づき、相性の良い異性を登録者から選び出して提案する。

 16年の県調査では、未婚男女の75・8%が「子どもがほしいと思う」と回答。まずは出会いの場を整えようと、秋田、福島両県で実績がある対策の導入に踏み切った。

 社会に広がる格差、若者世代のコミュニケーション力低下などを背景に「努力しないと結婚できない時代」(仙台市内の結婚相談所)。24年度までに1000人の登録を目指すセンターには、受け付け初日だけで250人が仮登録し、順調な出足を見せた。

 本年度スタートした県総合計画「新・宮城の将来ビジョン」で、県は子育て支援を大きな柱に据えた。合計特殊出生率は24年までに「1・40」に引き上げるという野心的な目標。センターに加え、設置が容易な授乳室の普及など、展開する施策も前のめり気味だ。

 村井知事は9日、仙台医療圏の4病院を再編し、2拠点病院を整備する計画を発表した際、県南に分娩(ぶんべん)施設が少ない現状を指摘。「病院の移転は決まっていない」と前置きした上で、「南の方に周産期を担う病院があるといいのではないか」と熱意を示した。

 少子化対策は本来、国が責任を持つ課題であり、即効性は期待できない。交流の機会を減らす新型コロナウイルスの影響も避けられず、経済停滞による将来不安から妊娠を控える動きも予想される。

 多様な価値観を尊重しつつ、結婚から妊娠、出産、子育てまで幅広く、息の長い支援に向けた試行錯誤が続く。県子育て社会推進課の長谷川素子課長は「子育てしている人が壁を感じないように社会全体で応援する機運を高め、結婚や出産の希望がかなうような支援に取り組みたい」と話す。

[合計特殊出生率]1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数で、15~49歳の年齢別出生率を合算する。晩婚化や未婚化が進み、全国的に減少。九州を中心に西日本が高く、大都市を抱える地域が低い傾向にある。20年の合計特殊出生率は1・34、出生数は過去最少の84万832人だった。

9月に開設されたみやぎ結婚支援センター。AIを活用して縁結びを応援する
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