学びの場確保試行錯誤(6完)不登校<耕論・宮城知事選>

 学校に行けない、行くのがつらい子どもが増えている。少し先を生きる大人が見守る必要がある。多様化するニーズにどう応えるか試行錯誤が続く。(宮城県政取材班)

学校のウエルカムボードを制作するほっとルーム。支援員がみんなで作り上げる喜びをアシストする=多賀城市城南小

 宮城県は2019年度、1000人当たりの不登校児童・生徒数が4年連続で全国最多だった。県教委は不登校の子どもを受け入れる「学び支援教室」を20年度に導入、打開の糸口を探る。

 多賀城市城南小(児童732人)は学び支援教室「ほっとルーム」を開設している。金曜日の2時間目は、社会性を養う「ソーシャルスキルトレーニング」。

 「伝言ゲームをしよう」。専任教員の豊田幸二教諭(51)が呼び掛けた。

 先頭の児童がささやいた文章を、次の子どもが伝える。うまく聞き取れず焦る児童に、豊田教諭が「何回聞き直してもいいよ。そういう練習だからね」と丁寧にフォロー。一字一句たがわず伝わり、児童に笑顔が光った。

 同校は20年度、ほっとルームや保健室で不登校の傾向にあった児童15人に対応した。うち7人が教室に復帰したり、特別支援学級へ入ったりした。

 今年の夏休み前には、ほっとルームの全員で学校のウエルカムボードの作製に取り組んだ。学校に来て良かったと思えるように作り上げる喜びの共有を目指す。豊田教諭は「一人一人に大切にされている実感がたまるような環境を整備し、自立を助けたい」と話す。

 文部科学省の児童生徒問題行動・不登校調査によると、県内の不登校の推移はグラフの通り。データの上では東日本大震災以降、悪化の一途をたどる。

 「明確な理由は分からないが、深刻に受け止めている」。県教育長の任命権者である村井嘉浩知事は20年10月の定例記者会見で釈明し、「県全体、社会として寛容であるのも一つの理由かもしれない」と持論を展開した。

 多様な学びの場を確保しようと、市町村教委と連携して県教委が16年度から取り組むのが「みやぎ子どもの心のケアハウス」だ。

 県内33市町村の自治体に各1カ所ある。学校の外に置かれ、一軒家や公共施設など場所はさまざま。学習指導や体験活動を通じて自立を支援し、保護者の相談も受け持つ。

 ケアハウスを16年5月に始めた塩釜市教育支援センター「コラソン」。身崎裕司所長兼スーパーバイザー(61)は「学校への復帰も目標の一つにはなっているが、子どもの意思を尊重し、無理はさせない」と説明する。

官民の連携強化必須

 宮城県内で増え続ける不登校の子ども一人一人に合わせた学びや経験の場を提供する動きは、民間でも進んでいる。

 通信制高校に在籍しながら、自分のペースで通学できる「あすと長町高等学院」(仙台市太白区)。2004年に運営が始まったフリースクール「だいと」を前身に、県教委指定の「技能連携校」として今年4月に開校した。

 子どもの居場所として、創作などの体験活動を中心とするフリースクールが多い中で、同校は教科学習に力点を置く。通い慣れた校舎で柔軟な学習計画を用意し、仙台市内にキャンパスがある通信制高校で高卒資格が得られる。

 本年度初の定期テストが今月13日あり、中学3年、高校1~3年の生徒28人が挑んだ。高校生のテスト問題は、連携する通信制高校が作成した。

 「さまざまな事情がある子どもたちが主体的に活躍できる受け皿は、社会にまだ整っていない。学力がなければ、選択肢の幅が狭まる」。同校の石川昌征代表(53)は、学習重視の理由を説明する。

 高校生向けの授業でも、中学の復習を必ず入れ、つまずきを解消できるよう配慮。勉強で自己肯定感を高め、将来の可能性の広がりにつなげる。

 「元来真面目で、こつこつ取り組む子どもたちばかり。フリースクールでは、彼らの強みを生かした学び方を提案できる」と石川代表。異学年との交流が盛んで、先輩が進路を考える姿を目の当たりにした低学年の生徒が刺激を受ける好循環が生まれている。

 安心して学べる環境づくりに向け、官民の役割分担、連携強化は不可欠だ。

 石川代表は「行政が当事者の親子や先生の意見を聞き、どのようなニーズがあるのか把握する必要がある」と訴える。東北大大学院教育学研究科の後藤武俊准教授(教育行政学)も「民間で学びの場を確保している以上、行政は公費による支援を積極的に認める必要がある」と指摘する。

あすと長町高等学院の石川代表(中央)が見守る中、テストを受ける生徒たち=仙台市太白区
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