架空投資、悪徳商法 高齢者の被害防げ 大崎市が部署の枠超え連携

 架空投資話や悪徳商法などの消費者被害から高齢者を守ろうと、宮城県大崎市は県内の自治体に先駆け、消費生活センターとほかの部署や民間を連携させる被害抑止策を展開している。被害者の個人情報を融通し合って表面化しにくい被害を掘り起こし、超高齢化社会の到来を前に市民一体で「悪徳業者」と対峙(たいじ)する姿勢を強める。
(報道部・勅使河原奨治)

消費者被害の相談に応じる佐々木さん

 「不審な男が何度も出入りしているようだ」

 2018年春、大崎市の90代女性の異変に市の福祉部門の職員が気付いた。職員は消費者被害を疑い、すぐに市の消費生活センターに連絡、地域の民生委員が女性に面談した。

 「だまされて何か買わされていないか」と聞く民生委員に女性は答えをはぐらかした。高齢者は被害に気付かないか、恥ずかしがってセンターへの相談につながらないケースが多い。

 市が二の矢を放つ。福祉部門の職員が、介護施設入所に伴う金銭面の相談に応じる一環で女性の通帳を確認。過去に数百万円単位で現金が引き落とされていることを見つけ、センターの本格介入へとつなげた。

 女性は30年ほど前、「原野商法」の被害に遭っていた。以後数年に一度のペースで「被害を取り戻す」「より高値で転売する」と語る業者が訪れるようになり、その都度、現金をむしり取られていたという。

 センターと警察が連携して業者に連絡をとって以降、不審な男は姿を現さなくなった。さらに郵便局員や新聞販売店などが地域を回る際に目を光らせる。

 消費生活センターの佐々木真知子相談員は「消費者被害は被害回復が難しく、未然防止や早期発見が大事。個人情報の共有で早期介入が可能になった」と話す。

 市が消費者行政と他部署の連携を始めたのは08年にさかのぼる。多重債務や自殺対策の市民相談で、問題の背景に悪質商品を買わされたことによる多重債務や生活難に陥っているケースが多く見つかった。ただ、個人情報保護法がネックになり被害者の具体的な情報は共有できずにいた。

 改正消費者安全法が16年に施行され、消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)を設置すれば本人の同意なしに個人情報を融通し合えるようになった。市は18年3月に協議会を立ち上げ、日本郵便や新聞販売店、警察などをメンバーに入れた。守秘義務規定を設けた上で、地域で見守る体制整備を進めている。

 協議会の活用は全国的には認知が進んでいない。全国の1741自治体のうち、設置済みは331自治体にとどまる。県内で民間を含めた協議会があるのは大崎市だけだ。

 消費者庁地域協力課は「ただの高齢者見守りだけでなく、行政と事業者が連携して個人情報を共有できるメリットが十分に伝わっていない」と嘆く。

 高齢者は判断能力が衰える上、1人暮らし世帯も多く、悪徳業者から狙われやすい。県内の高齢化率は3月末時点で28・4%。国の推計によると、県の高齢化率は25年に31・2%、35年に35・0%に上る見通しだ。

 消費者被害に詳しい仙台弁護士会の千葉晃平弁護士は「超高齢化社会で被害を最小限にするため、福祉や消費者部門などの縦割りをなくした質の高い見守りがますます必要になってくる」と話した。

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る