(75)曼珠沙華人にのみ降るにはか雨/蓬田 紀枝子(1930年~)

 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)、すなわち彼岸花は「地獄花」などとも言われる。真っ赤な花は異世界に人を誘うような雰囲気が不気味だし、色あせはじめた曼珠沙華は端的に怖い。が、どうしても心引かれる花である。それだけに「人にのみ降るにはか雨」という観察には、曼珠沙華の魔力に取り込まれない意志の力が際立つ。雨に打たれるままの曼珠沙華に対し、にわか雨に慌てる人の動きはちょっとおかしい。人の存在感がどこか温かい一句。句集『野茨』より。
(浅川芳直)

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら
秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。

企画特集

先頭に戻る