社説(9/26):総裁選と核燃サイクル/見直しへ勇気ある議論を

 原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出し、再利用する「核燃料サイクル」の是非論が、29日投開票の自民党総裁選で主要テーマに浮上してきた。

 国策として事実上破綻しているにもかかわらず、建前ばかりの存続論では、もはや国民の理解は得られない。対立候補への攻撃材料として持ち出すだけでなく、各候補には自ら打開策を示し、議論を深める努力を求めたい。

 サイクル事業の要となる使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)は1993年に着工、97年に完成予定だったが、トラブルが続き、過去20回以上も延期されてきた。

 昨年7月、新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査にようやく合格したものの、設計・工事方法の認可に向けた日本原燃の申請手続きが遅れ、完工時期は見通せない。

 当初7600億円だった建設費は2兆9000億円に膨らみ、稼働から廃止までを含めた総事業費は13兆9400億円に上る見通しだ。このまま事業を継続すれば、さらに国民の負担は重くなる。

 再処理で抽出したプルトニウムは本来、ウランとともに混合酸化物(MOX)燃料に精製し、高速増殖炉で使用する予定だったが、その原型炉「もんじゅ」は開発研究が頓挫し、廃炉になった。

 プルトニウムは核兵器の原料になるだけに、使途が不明確な状態で保有し続けることには、国際社会から厳しい視線が向けられる。

 苦肉の策としてMOX燃料を一般の原発で使用するプルサーマル発電も計画通りには進まず、燃料の全てにMOX燃料を使う大間原発(青森県大間町)の建設も大幅に遅れている。

 日本記者クラブ主催の18日の討論会では、河野太郎行政改革担当相がサイクル事業の停止を主張したのに対し、他の3候補からは明確な方針が示されなかった。

 岸田文雄前政調会長は「再稼働を認めながら、サイクルを止めることは両立するのか」と河野氏の主張に疑問を呈した。サイクル事業を前提に再処理工場や中間貯蔵施設に搬出される使用済み核燃料が行き場を失い、全国の原発に積み上がれば、再稼働もできなくなるという理屈だ。

 これでは、原発を再稼働させたいと考える以上、実態として動いていなくても、サイクル事業の看板はいつまでたっても下ろせない。

 核燃料サイクルを巡り、政治が思考停止に陥るのは常に原発の存続、再稼働とセットで考えるからに他ならない。

 東京電力福島第1原発事故から10年、多くの国民が願ってきた「脱原発」は一向に進んでいない。

 民意に背を向け続けた自民党が変われるかどうかが問われる総裁選だ。消極的な延命論から抜け出すため、核燃料サイクルの現実を直視し、勇気ある議論が求められる。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る