風穴使って地酒熟成 山形の酒造関係者、明治期の遺構に注目

朝日風穴の底部に日本酒を並べて貯蔵する鈴木社長(手前)ら=17日、白鷹町

 山形県白鷹町の酒造関係者らが町内の山中にある風穴(ふうけつ)で地酒を熟成させ、「風穴貯蔵酒」として新たな価値を加えようと試みている。明治-昭和期に地元の人々が養蚕業に使った遺構を保管場所として活用。将来は風穴へのトレッキング体験などと併せ、地酒を広く楽しんでもらいたい考えだ。

深さはおよそ4メートル

 風穴は町内の唐松山(716・5メートル)の北側中腹にあり、縦約15メートル、横約10メートル、深さ約4メートルのすり鉢状。「朝日風穴」の名が付く。山の内部で冷えた空気が岩の隙間から吹き出す天然の特殊環境で、夏場でも気温は10度前後に保たれる。

 町史などによると明治期は風穴に石垣があり、養蚕卵がかえる時期を調整する低温保存庫だった。昭和中期からは養蚕業の縮小などに伴い、使われなくなったとみられる。状況を確かめようと町民有志が2019年、古地図を基に山中を探し、やぶや倒木に覆われた風穴を発見した。

 風穴貯蔵酒は、明治期の風穴を撮った写真が残っていた老舗「加茂川酒造」の鈴木一成社長らが手掛ける。鈴木社長らは19年、全国的に珍しい日本酒の貯蔵法になると考え、試験的に風穴に保存した。

将来は散策ツアーも

 鈴木社長らは20年に新たな酒を運び込み、前年分の一部を持ち帰って試飲した。今月17日にも鈴木社長ら関係者5人が風穴に行き、21年の分として一升瓶4本を追加した。

 加茂川酒造などは町内外の人々と風穴へ赴き、酒を置く新たな企画も20年に始めた。希望者に酒米の田植えや酒の仕込みなどに携わってもらい日本酒銘柄「蔵人考(くろうどこう)」を造るプロジェクトの一環で実施し、活動の輪を広げている。

 現在は風穴へ向かうために約30度の急勾配を20~30分ほど歩く必要があり、足を運べる人は限られる。別ルートの整備を進め、山中の散策と地酒体験を組み合わせたツアーなどで地域PRにつなげる計画もある。

 鈴木社長は「みんなと山を登って下り、共に地酒を味わう体験を楽しみながら毎年続けていきたい」と話す。

1910(明治43)年に撮影された朝日風穴の写真。石垣(左と手前など)がある(白鷹町教委提供)

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