社説(9/27):衆院・小選挙区制25年/政治の劣化 自民は直視を

 小選挙区比例代表並立制による初の衆院選が1996年10月に実施されてから、今年で25年を迎える。金権腐敗や派閥支配の悪弊で失われた政治の信頼回復を目指し、政権交代可能な仕組みづくりを掲げた制度は、「功」よりも「罪」の側面が際立つようになった。同じ制度下で11月に行われる見通しとされる9回目の選挙を、新たな改革の必要性を認識する場にしたい。

 おおむね3~5人が当選する以前の中選挙区制では、一党優位の自民が政権を維持するために複数候補を同じ選挙区に立てた。掲げる政策に大差はなく、資金の力と派閥の論理が横行。リクルート事件など相次いだ不祥事も制度改革を促す引き金となった。

 政党対決の流れをつくるため、1人しか当選できない小選挙区と、全国11ブロックで政党が得票に応じて議席を得る比例代表の2本立てに移行。2度の政権交代につながったが、下野した旧民主党が分裂を繰り返すなどし、二大政党制は定着しなかった。2012年以降、安倍晋三前首相を先頭に3度の衆院選で圧勝した「自民1強」時代は9年に及ぼうとしている。

 四半世紀が経過する小選挙区制の功罪とは何だったのか。衆院議員の任期満了(10月21日)まで2カ月に合わせ、本紙はインタビュー企画を展開した。中選挙区時代から東北で衆院選を戦った自民の閣僚経験者ら5氏による発言は、現状への危機感がにじむ示唆に富む内容だった。

 「政党トップの人気にすがる『風頼み』の議員が増え、主体性が消えた」「意見をぶつけ合う切磋琢磨(せっさたくま)がなくなり、人が育っていない」。政治家としての質の低下を指摘し、「改革は大失敗だった。政治のスケールが小さくなった」と後悔の言葉も漏れた。

 「衆院選の顔」を品定めする意味合いがこれまでになく強い自民党総裁選(29日投開票)は象徴的だ。内閣発足時に7割近かった菅義偉政権の支持率急減で、「このままでは選挙に勝てない」という議員の不安が噴出した。

 1強の追い風しか知らず、選挙基盤が弱い当選3回以下が自民議員の半数を占める。「勝てるなら誰でもいい」との個利個略が交代論を誘発し、菅首相を総裁選不出馬に追い込む流れをつくった。

 「政治とカネ」も、小選挙区導入とともに創設された政党交付金が19年参院選広島選挙区の買収事件で原資となった疑念が消えないなど、不透明感は増すばかりだ。生活圏とかけ離れた選挙区割り、人口配分に伴う地方議席の縮小といった、制度を取り巻くゆがみは限界に達している。

 党本部が公認権と資金を握り、党議拘束で議員を締め付け、単色化しつつある保守の土台。自らがうたう「国民政党」として多元性がある風土を取り戻すには、まず自民の一人一人が来る衆院選で制度の劣化を直視するしかない。

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