社説(9/28):中台のTPP加盟申請/「ルール重視」の対応貫け

 環太平洋経済連携協定(TPP)の役割は、各国が自由、公正で透明性の高い通商ルールを共有し、貿易や投資を促進することだ。政治的な対立が持ち込まれ、機能不全に陥るような事態は何としても避けなくてはならない。

 台湾海峡を巡って緊張が続く中国、台湾が相次いでTPPへの加盟を申請した。米国不在のTPPで主導的な役割を果たしてきた日本は、今年の議長国でもある。加盟国の分断を招かぬよう細心の注意を払いつつ、中国に対してルール重視の毅然(きぜん)とした対応を貫くべきだろう。

 中国が加盟申請を行ったと発表したのは16日。王文濤商務相が事務局の役割を担うニュージーランドの担当相に必要な書類を提出したことを明らかにした。

 背景にあるのは、米バイデン政権の下で構築が進む中国包囲網をにらみ、台湾に先駆けて加盟を果たさなければ、経済連携の枠組みから閉め出されるとの懸念だ。

 TPPは当初、12カ国が署名したが、米国がトランプ政権発足後の2017年に離脱したため、日、豪、カナダなど11カ国で協定をまとめ直した。加入には全加盟国の承認が必要なため、中国は台湾に先を越されることを最も警戒していたとされる。

 一方、台湾が中国の発表から1週間もたたずに加盟申請したのにも、同様の事情がある。記者会見した担当閣僚の〓振中・政務委員は「(中国が)先に加入すると、台湾の加入はリスクにさらされる」と危機感を隠さなかった。

 台湾は世界的な半導体不足が長期化する中、各国の需要に応じて、国際社会での地位を向上させてきた。「友好関係にある日本が今年の議長国であること」(〓氏)も申請を急いだ理由だった。

 TPPは関税の100%近い撤廃のほか、知的財産権の保護や自由なデータ流通、不公正な補助金の制限など、厳格なルールを盛り込む。

 国有企業改革や知的財産権保護の遅れが指摘される中国の加入は、台湾に比べてハードルが高いものの、シンガポールやマレーシアが「歓迎」の意向を表明するなど、加盟国の姿勢には温度差もある。

 台湾の申請について、中国は「一つの中国」の原則を掲げ、「断固反対する」と反発している。結果によっては、中台の軍事的な緊張がさらに高まりかねない。

 中国の申請を門前払いすることはできない以上、日本にはルールに徹した対応で、加盟国の結束を維持していく努力が求められる。

 必要なのは有力なパートナーだ。中国の加盟申請を機に米国がTPP復帰を検討する可能性もある。既に申請を終え、加盟交渉が進んでいる英国も伝統的に自由貿易を尊重する仲間だ。米英両国を可能な限り早期に迎え入れ、連携しながら加盟国を合意に導く戦略を描きたい。

(注)〓は登の右に、おおざと

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