(77)木犀(もくせい)に歩く言はうか言ふまいか/鈴木 しづ子(1919年~没年不明)

 木犀の甘い香りの漂う秋の道。何か大切な告白をしようか、やはりやめようかと思い悩みながら歩いている女性。告白の内実は分からないが、明るい木犀の香と対比されて、未来が見えない青春の鬱屈(うっくつ)した気持ちが際立つ。作者は戦中戦後の激動期を波乱に生き、<夏みかん酸つぱしいまさら純潔など>の鮮烈な俳句で注目されたが、1952年に突如消息を絶つ。強く激しく生きているように見える人の、意外に弱く揺れ動く心中が垣間見える。句集『指環』より。(永瀬十悟)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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