社説(9/29):「緊急事態」全面解除/医療不安積み残したままだ

 ワクチン接種率が上昇し、新規感染者数や重症者数が減少したとはいえ、安心できる状態だとは言えまい。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府が19都道府県に発令していた緊急事態宣言は懸念を抱えたまま、あす全面解除される。

 不安の根は医療体制にある。コロナ対策の根拠法である特別措置法が規定する「臨時の医療施設」の整備が心もとない。

 特措法は感染のまん延で病院が不足した場合、都道府県知事は臨時の施設を開設し、医療を提供しなければならないと定めている。

 夏に始まった感染の「第5波」では、本来入院すべき人が適切な治療を受けられず、自宅療養中に亡くなるケースが相次いだ。

 自宅療養者はピーク時に全国で13万5000人を超えた。医療従事者は病院外での容体急変にも対応しなければならず、医療体制は「災害レベル」に陥った。

 まさしく、こうした事態を回避するのが特措法の目的だ。ことし2月には、臨時の医療施設は緊急事態宣言の発令中に限らず、政府が対策本部を設置している期間中は開設が可能と改めた。

 医療が逼迫(ひっぱく)する前に万全の準備を促した形だ。しかし、体育館を転用したり、公共施設の敷地にプレハブ型の病棟を設置したりするなどして、「入院難民」の急増に備える計画を具体化させた自治体は少ない。場所は用意できても、人材集めに難航したのが主因だ。

 医療体制の拡充は、コロナ禍に襲われた昨年春以降、喫緊の課題だと再三指摘されてきた。臨時の医療拠点は明確な法的根拠に基づく重要な応急施設である。第5波の二の舞いを避けるため、次期政権は強いリーダーシップを発揮すべきだ。

 冬場に向かい、感染の「第6波」が警戒されている。臨時施設と病床の確保に努めるのと並行し、酸素投与や抗体カクテル療法を担える施設を増やすなど、重症化を防止するための備えが急務だ。

 緊急事態宣言とともに、宮城など8県に適用したまん延防止等重点措置も全面解除されるが、社会経済活動が全面的に再開するめどは立っていない。

 飲食店は休業や時短営業、酒類の提供停止といった厳しい制約を受け続けてきた。客足が戻り、経営と雇用が安定するまでには相当の時間を要するだろう。

 解除後の営業時間や酒類提供などの制限は、自治体の判断に委ねられる。段階的に緩和され、通常営業が可能になっても売り上げが回復しなければ、事業の継続はおぼつかない。

 長い間、営業の自粛要請に応じてきた事業者の努力が無駄にならないよう、制限の緩和後を見越した支援の仕組みを準備すべきだ。

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