(79)銀杏を拾ひ大きな影を出る/早野 和子(1935年~)

 ここに描かれていない小さな影があります。それは銀杏の実を拾おうとしてしゃがんだ自分自身の影です。今出てきた「大きな影」とは、言わずもがな銀杏の木のもの。小さな実を拾っていると、そこに集中して周りの景色は見えていません。拾い終わった晴れ晴れしさが、木の影の大きさを見つけさせるのです。銀杏の実は私の影を出て、私は銀杏の木の影を出る。日差しの中を歩き出すと、ひと仕事終えたようなのびやかさも感じられます。句集『種』より。
(及川真梨子)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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