社説(10/2):大津中2自殺から10年/いじめ防止 役割再認識を

 大津市立中2年の男子=当時(13)=がいじめを苦に自殺してから、11日で丸10年となる。2013年にいじめ防止対策推進法が制定される契機となったが、その後もいじめは減らず、児童生徒が死を選ぶ痛ましい事案が相次ぐ。

 9月も東京都町田市の小6女児が「いじめを受けていた」などと記した遺書を残し、昨秋に自ら命を絶ったことが明らかになった。文部科学省は21日、いじめ防止法に基づく対応の徹底を求める通知を全国の都道府県教委や政令市教委などに出した。

 防止法はいじめに対処する国、自治体、学校、さらに保護者の責務を定める。それぞれが役割を果たしながら連携することが望まれているが、現実の場面で十分に機能しているとは言い難い。

 町田市では女児の自死後、いじめの疑いを把握していたと学校が遺族に説明。事実関係の調査を法が義務付ける「重大事態」として学校が市教委に報告したのも今年2月と遅れた。不信感を募らせた遺族が9月になって自死の公表に踏み切った。

 学校と教委の一連の対応が「速やかに調査し、いじめを受けた児童と保護者に必要な情報を適切に提供する」よう求める法の趣旨に則していたか、大いに疑問が残る。

 防止法はいじめを「児童生徒が心身の苦痛を感じる」行為、重大事態を「いじめで児童生徒の生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある」場合と定義する。全国の学校と教委は、いじめへの対処の起点となる二つの定義をどう解釈するかで、時には強い非難にさらされてきた。

 仙台市青葉区の中2男子=当時(13)=が17年4月に自死した問題が典型例だ。学校と市教委は当初いじめを否定したが、文科省からの指導直後、いじめの重大事態として調査する方針に一転させた。この時の学校と市教委の姿勢は、防止法に関する同省の資料などで「誤った対応事例」として紹介されている。

 防止法で従来より広義となったいじめの定義に、教育現場では異論もある。いじめを巡り、埼玉県川口市立中の元男子生徒が市に損害賠償を求めた訴訟で、市側は「心身の苦痛を感じていると主張しさえすれば、あらゆる行為がいじめに該当しうる」などと法の「欠陥」を主張している。

 川口市の主張は極端としても、いじめの積極的な把握が奨励される近年、いじめの認知件数は激増し、学校現場では対応への負担感が強い。重大事態への兆候が膨大な業務に埋もれ、見落とされることがあってはならない。教員の多忙化は、こうした観点からも見直しの余地があろう。

 防止法は先月28日で施行から8年を迎えた。保護者にも「子の教育の第一義的責任を有し、いじめを行わないよう指導に努める」責務を課す法の意味を改めてかみしめ、私たちの役割を考えたい。

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