子どものワクチン接種必要? 「重症化避けたい」「副反応も怖い」

 新型コロナウイルスのデルタ株が拡大した流行「第5波」は、若い世代の感染が目立った。12歳以上の子どもがワクチンを接種する機会が増えた一方で、保護者には副反応への不安や接種の必要性に対する疑問が根強い。子どもの接種メリットをどう捉えるか、専門家に聞いた。
(生活文化部・浅井哲朗)

 仙台市宮城野区の永井小児科医院。新型コロナワクチン接種日の火、木曜の夕方は、中高生を中心に親子連れが数多く訪れる。

 「これで安心して水泳部の校外練習に参加できる」。2回目接種を終えた仙台市の中学2年女子(14)と付き添いの母親が、ほっとした表情を浮かべた。

 永井幸夫院長は「接種をするかどうか迷っていた親子が、最近受けに来るようになった」と話す。接種人数は1日30人に限られ、予約から1カ月ほど待つ必要があるが、問い合わせの電話は引きも切らない状態だ。

母親50人の多くは前向き

 河北新報社が先月、接種対象の10代の子を持つ宮城県内の母親50人に聞いたところ、8割以上が子どもの接種に前向きだった。その理由は「重症化のリスクを回避したい」が多かった。一方で、副反応への不安も多く聞かれた。

 「家族でとても悩んだけれど、かかって重症化したら後悔すると思い、接種を決めた」と中学1年男子(12)の母親。中学3年女子(15)の母親は「1回目の後に嘔吐(おうと)してつらそうだったが、2回目も受けて充実した学校生活を送れるようにしたい」と期待する。

 「受けさせない」と答えた人からは、安全性への疑問やいじめなどを懸念する声が上がった。

 高校1年女子(15)の母親は「長期的な影響はまだ誰も分からない。(毒性をなくしたウイルスを用いた)不活化ワクチンが早く開発されてくれれば」と願う。大学1年女子(19)と高校2年男子(16)の母親は「子どもたちの副反応への恐怖心が消えない。差別につながる恐れのあるワクチンパスポートのようなものは正直、導入してほしくない」と表情を曇らせた。

少なくとも保護者は打って

 感染力の強いデルタ株により、第5波では10代以下の子どもにも感染が広がり、中等症以上の肺炎に悪化する例も目立った。国内では少ないながらも、回復期の子どもに下痢や発熱、発疹の症状が出る「小児多系統炎症性症候群(MIS-C)」も報告されている。米国では死亡例もある。

 永井院長はこうした症状悪化を回避するためにも、ワクチンの有効性を説明し、接種を勧めている。「子どもの感染はほとんど家庭内で起こる。もし本人が打たないと決めても、少なくとも保護者は受けてほしい」と話す。

中学生にワクチン接種をする永井医師=9月21日

親子で正しい情報の共有を

 新型コロナに感染した子どもの入院治療に当たる宮城県立こども病院(仙台市青葉区)では、持病のある子どもへのワクチン接種も行っている。

 「基礎疾患のある子どもは重症化が命に関わる場合もあるので、より強く接種を勧めている。重症化リスクの少ない健康な子どもでも、感染防御効果を高められる」。リウマチ・感染症科の桜井博毅医長は接種のメリットをこう説明する。

 思春期の子どもは、接種による心理的ストレスから体調を崩す恐れがあることも考慮すべきだという。「感染しても基本的に死には至らない健康な子どもに、あえて副反応のリスクを負わせるのかという意見は、当然ある」

 桜井医長は接種に慎重な声に理解を示し「周囲の圧力を感じて接種するかどうかを決めるのは望ましくない。正しい情報を親子で共有し、判断してほしい」と助言する。

 日本感染症学会で新型コロナワクチンに関する提言をしている東北医科薬科大の関雅文教授(感染症学)は「子どもの副反応が成人より特段ひどくなるわけではない」と説明。「重症化や家庭内感染のリスクを下げる効果を考えれば、接種するメリットの方がはるかに大きい」と強調し、市販の解熱鎮痛剤などを準備して冷静に対応するよう求める。

 保護者の中には、10歳未満の感染者の増加や保育園でのクラスター(感染者集団)発生などを受け、接種対象年齢の引き下げを望む声もある。海外では、11歳以下を対象とした臨床試験(治験)でワクチンの有効性が示され始めている。

 国は高齢者らへの3回目の追加接種を検討しているが、関教授は「社会全体のバランスを考え、年齢引き下げを含め、まずは未接種者が多い若い年代に幅広く接種を広めることが重要ではないか」と指摘する。

[メモ]現在、主に接種されているファイザー、モデルナ両社のワクチンは12歳以上が対象。小児の場合、腕の痛みや発熱、倦怠(けんたい)感などの副反応が、大人よりもやや多い頻度で出るとされる。若い男性を中心にまれに心筋炎を起こすことも報告されており、胸の痛みが出た場合は受診が必要になる。

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