まだまだ少ない「理系女子」 中高生向け支援プログラム広がる

山形大の出前講座。理工系の大学院生が女子生徒の質問に答えた=7月26日、米沢興譲館高

 21日は「女子大生の日」。大学が女性に門戸を開いてから100年以上たち、女子の大学進学率は5割を超えた。だが理工系分野は男子が多数を占め、女性研究者の少なさが課題となっている。進路選択の男女差をどう解消するか。女子中高生を支援する取り組みを取材した。
(生活文化部・片山佐和子)

ロールモデル示す

 「理系は男子が多いが、どんな学習環境か?」

 「大学院に進んだ理由を教えて」

 米沢興譲館高(米沢市)で7月末、理系志望の1、2年生向けに山形大の出前講座が開かれた。同大大学院の黒谷玲子准教授(遺伝子工学)の講演に続き、女子生徒限定の座談会があり、受験や進路の疑問・悩みに女子大学院生6人が答えた。

 「女子が少なくても差は感じないと聞き、安心した。私も好きな研究をしたい」と理数探究科2年の安部真桜さん(16)。探究科1年の梅津早哉香さん(16)も「大学生活をイメージできた」と声を弾ませた。

 講座は、科学技術分野で活躍する女性を増やそうと科学技術振興機構が始めた「女子中高生の理系進路支援プログラム」の一環。事業に採択された山形大は2020、21年度、女性の研究者や院生が中学高校を訪問し、実験や講演、課題探究学習の助言などをする。月1回、ラジオの中学生向け科学番組でも理工系女子の情報を発信している。

 事業を担当する栗山恭直理学部教授(化学・理科教育)は理科学習の普及に長く取り組んできた。「理系の女性のキャリアは、現状では看護系以外はイメージしづらい。身近な女性ロールモデルを通し、選択肢を広げてほしい」と狙いを語る。活動を通じ、大学院生が自身のキャリアを見つめ直す機会にもなるという。

固定概念を問い直す

 教育現場では、教員の言動が児童生徒の性別役割意識に影響を与える「隠れたカリキュラム」を問い直す動きもある。

 内閣府は今年3月、中学校教員向けに啓発資料「男女共同参画の視点を取り込んだ理数系教科の授業づくり」を作った。「理工系の進路選択は主に男子がする」といった固定概念の根強さを挙げ、「女子の理数離れは環境に要因があり、理数教科の敬遠や成績の男女差を招く」と注意を促す。

 教員に数学者の絵を描かせて「理系は男性」という無意識の思い込みに気付かせるワークシートや、男女平等に生徒に接しているかどうか、同僚教員が授業をチェックする際のこつも盛り込んだ。

 理数授業の好事例や理工系の仕事をする女性たちの声も紹介。授業改善につなげてもらおうと、インターネットでも公開している。

[女子大生の日]東北大の前身、東北帝大が1913年8月21日、全国の帝大で初めて女性3人の入学を許可。女子学生への門戸開放を記念し、東北大が2020年に記念日登録した。

「教育にジェンダー視点を」山形大・河野教授に聞く

 なぜ理系分野に進む女性は増えないのか。ジェンダーが理系の進路選択に及ぼす影響を研究し、内閣府の中学校教員向けの啓発資料作成にも携わった山形大学術研究院の河野銀子教授(教育社会学)に聞いた。

 日本では第2次男女共同参画基本計画(2005年12月に閣議決定)で科学技術分野の参画推進を取り上げ、06年度に育児との両立支援など女性研究者を増やすための政策が始まった。

 女子の大学進学率は18年に5割以上になったが、理工系専攻の割合は相変わらず低い。研究者を増やすことだけに着目し、土台となる教育現場へのアプローチを置き去りにしたためだ。

 公立小中学校教員を対象とした国立女性教育会館の18年調査によると、2割強の教員が「男子の方が理数系教科の能力が高い」と考えていた。その割合は男性より女性が高く、若い世代ほど多かった。こうした思い込みが授業や日常の振る舞いに影響し、女子を理系から遠ざけてきた。

 苦手意識を持つ女子の関心を高めるため、小中高校の理数教育をジェンダー視点で捉え直す必要がある。理科の授業分析などによると、男子は競争、女子は協力を好む傾向が見られる。数学新聞を作るなどグループワークやエッセーを授業に取り入れると女子が積極的になり、男子の学びも深める効果があったという。

 学校の「風景」も変えよう。理数教科の教員は女性割合が低く、子どもたちに「男性の領域」という印象を与える。女性の校長や教頭も少ない。女性教員が活躍できる環境を整えるべきだ。

 人工知能(AI)の普及など科学技術の進展はめざましく、性別に関わりなく誰もが使いこなせる知識やスキルが求められている。理系分野の男女格差解消は多様な視点を科学技術に取り入れ、より良い社会をつくることにつながる。

[かわの・ぎんこ]上智大大学院修了、博士(社会学)。山形大助教授などを経て、2014年から現職。編著書に「女性校長はなぜ増えないのか」など。第5次男女共同参画基本計画策定に関するワーキンググループメンバーも務めた。徳島県生まれ。55歳。

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