「老犬・老猫ホーム」の需要拡大 ペット長寿化で介護が負担に

 ペットの犬や猫が長寿化し、自宅で世話をするのが難しくなるケースが増えている。飼い主自身が高齢になって飼えなくなることも。年老いたペットを一時的に預かったり、終生面倒をみたりする「老犬・老猫ホーム」を訪ね、ペットとの向き合い方を考えた。
(生活文化部・安達孝太郎)

シロを迎えに来た武田康二さん(左)、清美さん(左から2人目)夫妻と菊池さん

「家族支える場増えてほしい」

 土曜の朝、宮城県亘理町の武田康二さん(54)、清美さん(54)夫妻が、仙台市青葉区の「ニャンワンクラブ」を訪れた。県内では数少ない老犬・老猫ホームの一つだ。
 「元気そうだね」。康二さんが高齢の愛犬シロ(推定13~14歳)をなでると、甘えるように目を細めた。毎週末、繰り返される光景だ。
 今春、シロの体力が急に落ち、5月には後ろ脚が衰えて立てなくなった。試行錯誤しながらおむつを着け、食事を口元に運んで食べさせた。同じ頃、夜中に甲高くほえるようになり、獣医師に認知症の疑いを指摘された。康二さんがシロに寄り添ううちに朝になることもしばしばだった。
 7月、インターネットで探し出したニャンワンクラブに平日の世話を依頼した。当初は愛犬を家族以外に委ねることに罪悪感があった。ただ、「夫婦共働きで、肉体的にも精神的にも限界に近づいていた。クラブがなかったらどうなっていたか」と康二さん。今は2人が休みの土日に自宅で面倒をみる。
 シロは東日本大震災の被災犬。武田家が初めて迎え入れた飼い犬で、2011年夏にやって来た。散歩が大好きで、近所のあぜ道を元気に走った。康二さんは「介護が必要になるとは想像もしなかった」と言う。
 クラブ代表の菊池信恵さん(67)は20年ほど前、自宅でペットホテルを営んでいた。仕事を持つ女性の老犬を平日の日中に預かったことがきっかけで、老犬・老猫ホームを始めた。
 折からのペットブームで預かり数は徐々に増えた。認知症でほえ続ける犬に付き添ったり、器具を手作りして寝たきりの犬の体勢を変えたり。獣医師や飼い主らと相談しながら、試行錯誤を繰り返してきた。
 今は一時的に15匹を預かる。このほかに、独居の飼い主が高齢者施設に入ったり死亡したりした9匹を引き取った。親族が飼おうとしたものの、排せつの世話が難しくて連れてこられた高齢猫もいる。
 クラブの収容可能数は限界に近い。ペットの引き取りを決断する時は「責任の重さに押しつぶされそうな気持ちになることもあるが、犬や猫たちが穏やかに過ごせる場所を提供したい」と菊池さん。「もっとペットを介護する家族を支える場が増えてほしい」と話す。

[ペットの長寿化]ペットフード協会の2020年調査によると、犬の平均寿命は約14・5歳、猫は約15・5歳。長寿化によって生涯必要経費も増えており、犬は平均約207万円、猫は約124万円。

全国の施設数、5年で2.8倍

 老犬・老猫ホームは増加傾向にある。環境省によると、飼い主から有償で動物を引き取る譲受飼養業の登録・届け出事業者数は、2020年に全国で178(うち東北は10)と、5年で約2.8倍になった。
 施設増加の背景には、ペットや飼い主の高齢化だけではなく、動物愛護の機運の高まりがある。13年施行の改正動物愛護管理法は、飼い主がペットを最期まで飼育する責務を明記した。ただ、老犬・老猫ホームのサービス内容は千差万別で、認知度も高いとは言えない。
 全国の老犬ホームを調査した情報サイト「老犬ケア」運営会社社長の森野竜馬さん(51)は「犬や猫が高齢化した時には新たな費用がかかる。それを理解してペットを飼う人が増えれば、選択肢の一つとして老犬ホームの需要が高まるのではないか」と話す。

仙台市獣医師会「寿命考えて飼おう」

 犬や猫を迎え入れる際、飼い主が心掛けることは何か。仙台市獣医師会長の小野裕之さん(63)はまず、「動物の寿命を考え、最期まで世話をできるか考えて」と呼び掛ける。さらに「犬は種類によって必要な運動量が違うなど性質が多様。事前に調べてほしい」と言う。
 犬や猫は病気の進行が人よりも速い。「普段と様子が違うときは早めに受診し、7、8歳を過ぎたら1年に1度は血液検査などの健診を受けてほしい」と小野さん。医療の高度化に伴い診療費用が高くなる事例が増えており「保険に入った方が安心」とアドバイスする。
 飼い主がペットより先に死亡するケースへの備えも大切だ。情報サイト「老犬ケア」を運営する森野竜馬さんは、対策の一つとして、ペットのために残す財産と世話人などを決めておく銀行の信託商品を挙げる。その上で「親族と早めに話し合ってもらいたい」と勧める。

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