社説(10/3):性犯罪規定見直し/被害者の声 法改正に生かせ

 性犯罪を処罰する刑法などの規定を見直すかどうかの検討が、法制審(法相の諮問機関)で始まった。被害者は人格や尊厳を傷付けられ、深刻な精神的ダメージを受ける。加害者が罪に問われなかったり、被害者が泣き寝入りしたりすることが繰り返されないよう、処罰の範囲を広げるといった実効性のある法改正につなげなければならない。

 性犯罪の規定を巡っては、2017年の刑法改正で強姦(ごうかん)罪の名称が強制性交罪に変わり、法定刑の下限が懲役3年から5年に引き上げられた。だが、被害者や支援団体などからは、より抜本的な改正を求める声が上がっていた。

 最大の論点となるのが、暴行や脅迫があったことを立証できないと罪に問えない「暴行・脅迫要件」の見直しだ。

 暴行や脅迫がなくても、被害者が恐怖心などから抵抗できない例は少なくない。支援団体などは被害の実態に合っていないとして、要件を撤廃した上で、性交の同意がないことを要件とする「不同意性交罪」の創設を求めている。

 法制審に先立って議論を重ねた法務省の検討会では、同意がない性行為を処罰すべきだとの意見では一致したものの、「処罰の範囲が不明確になり、冤罪(えんざい)を生む恐れがある」などの反対意見が出て、結論は出なかった。

 子どもの性暴力被害への対処も重要だ。

 法制審では、欧米各国に比べて低い性交同意年齢(13歳)を引き上げるかどうかや、公訴時効(強制性交罪は10年)の延長や撤廃、上司や教師らが地位や関係性を悪用した性行為に対する処罰規定の必要性なども論点となる。

 子どもは、その時は何が起きたのか分からず、10年以上たってから被害を認識することがある。13歳という年齢に関しても、引き上げが必要だとの意見が出ている。ただ、これらについても、専門家の見解は分かれている。

 法制審の部会には、被害当事者が委員として加わるという。議論は難航が予想されるが、被害者の声をできる限りくみ取って法改正に生かすべきだ。先行する海外のように性を人権との関係で捉える視点も求められる。冤罪に関しては、取り調べに弁護士を同席させるなど、防ぐための仕組みが必要だ。

 法改正の議論とともに、性教育や被害者支援にも力を入れなければならない。

 被害者支援では、治療や支援を1カ所で受けられる「ワンストップ支援センター」が3年前、全都道府県に設置された。24時間電話相談に応じる態勢は来月1日、ようやく全国に広がるが、センターの設置は多くの都道府県で1カ所のみ。拡充が望まれる。

 性犯罪は「魂の殺人」と言われ、精神的ショックから心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる被害者も多い。そうした人たちへの中長期的な支援も課題となる。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る