社説(10/4):カーシェア協会10年/被災地発 支援のモデルに

 東日本大震災で甚大な被害を受けた東北の沿岸部では今も多くの支援団体が活動を続ける。被災地発の実践モデルとして定着した取り組みも少なくない。

 その一つが、一般社団法人「日本カーシェアリング協会」。震災の最大被災地の石巻市で誕生し、今年7月に設立10年を迎えた。全国から寄付を受けた車を集め、復旧作業や避難生活に欠かせない暮らしの足を提供した。

 活動の「生誕の地」となったのが石巻市万石浦地区の仮設住宅団地。協会が寄付車を団地に置き、住民が共同で使う。買い物や病院への送り迎えや墓参りと、利用目的はさまざま。住民が自ら運転したりドライバーを引き受けたりして高齢者らを乗せる。利用者の使った距離に応じてガソリン代といった経費を毎月精算する。

 約100世帯が暮らした万石浦団地では、車が住民同士の結び付きを強める役割も果たした。住民とボランティアの運転者が車内で時間を共にすることで自然と会話が生まれ、相手の困り事を把握する。生活環境を良くする機運が徐々に高まり、定期的なごみ拾いや懇親会と活動が増え、自治会の結成にもつながったという。

 地域を支える潤滑油として他の仮設団地にも広がったカーシェアは現在、市内10カ所を含む全国21カ所で計約800人が共同利用している。

 実践は震災復興支援にとどまらない。協会はノウハウを生かし、大規模災害時の被災者への車両の無償貸し出しにも乗り出している。2016年に起きた熊本地震の被災地を含め、貸し出しは約1500件に上った。

 今年7月には企業や自治体計7団体と連携支援組織「モビリティ・レジリエンス・アライアンス」を設けた。車両やタイヤ、カー用品の提供や自動車整備工場といった情報を共有する。大規模災害が起きた場合、生活再建に向けて車が欠かせない被災者や現地に入る支援ボランティアに素早く車両を届けられる体制を目指す。

 協会の支援先は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける生活困窮者にも向く。当事者やサポート団体に低料金で車を貸し、生活再建や就労といった自立を後押しする。救済を求めるニーズへの対応を示した好例といえよう。

 車の共同利用や貸し出しの仕組みは、今後各地で起こり得る災害はもちろん、社会の多様な分野で暮らしを支える重要な手法としても注目される。活動を広げる意義は大きい。

 官民との連携を進めて浸透を図るとともに、自治体にとっては災害対応の項目に「被災者の車確保」を加える選択も有効だろう。10年で積み重ねた実績と得た教訓を生かし、車利用の有用性を発信するため、支援の輪の広がりに期待したい。

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