社説(10/5):岸田内閣発足/日本再生へ問われる指導力

 臨時国会がきのう召集され、岸田文雄自民党総裁が第100代首相に選出された。

 新型コロナウイルスウイルスがもたらした未曽有の国難を鎮め、日本社会の再生を軌道に乗せる国家戦略と指導力が問われる。

 新内閣は、総裁選で争った野田聖子元総務相が「こども庁」創設に向けた担当相に就任したほか、13人が初入閣した。新設した経済安全保障担当相に起用された小林鷹之元防衛政務官ら衆院当選3回の若手も抜てきし、清新さをアピールした。

 岸田氏は「人の話を聞くこと」にたけていると自負し、「自民党は生まれ変わらなければならない」と訴える。

 改革の断行は揺るぎのない信念と一気呵成(かせい)の行動力が必要である。だが、岸田氏は安倍晋三元首相と麻生太郎副総裁の顔色をうかがい、後ろ盾を期待しているとみられる。岸田氏は背後で両氏に手繰られかねない。

 党幹事長に甘利明氏を登用したことは改革に逆行しないか。甘利氏は経済再生相を務めていた5年前、現金授受疑惑が浮上し閣僚を辞任した。

 政治不信を招いた疑惑の当事者を要に据えた党執行部人事に、党再生に向けた強固な決意は見て取れない。岸田氏の「聞く耳」がもっぱら党内にしか向けられないのなら、改革は早晩頓挫するだろう。

 岸田内閣は感染の「第5波」が落ち着き、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が全面解除された直後に発足した。社会経済活動の本格再開にいよいよ期待が高まる。

 岸田氏はコロナ対策で(1)医療難民ゼロ(2)ステイホーム可能な経済対策(3)電子証明書の活用やPCR検査の無料化・拡充(4)感染症有事対応の抜本的強化-を4本柱に掲げた。

 最も注目したいのは医療難民ゼロへの取り組みだ。夏以降、入院すべき人が適切な医療を受けられないまま自宅で死亡するケースが相次いだ。

 臨時の医療施設やコロナ専用病院は、医療人材の確保難から設置が遅れている。救えたはずの命を助けられない事態を回避する最も重要な対策だが、前内閣の対応は後手に回り、課題として積み残された。岸田内閣は最優先で取り組むべきだ。

 景気の回復も並行して取り組まなければならない。

 岸田氏は小泉政権以来の競争を重視する「新自由主義的な政策」から転換を図ると表明した。格差の是正を目指して経済成長の果実を中間層に配分し、子育て世帯の住居費や教育費支援を強化する「令和版所得倍増計画」打ち出した。「自助」を重視した安倍晋三氏と菅義偉氏のスタンスと対極にある。

 一方で岸田氏は、金融緩和や成長を重視するアベノミクスを踏襲する方針だ。分配する果実を得るため、成長戦略を着実に具体化しなければ、「所得倍増」など絵に描いた餅になろう。

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