社説(10/7):「パンドラ文書」報道/税逃れ対策 さらに強化を

 汚職撲滅を訴えたヨルダンのアブドラ国王や格差是正のための税制改正を主張した英国のブレア元首相らが、タックスヘイブン(租税回避地)を使って税逃れや財産隠しを図っていた実態が明らかになった。

 回避地の内幕を暴いた「パナマ文書」報道から5年。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、新たに入手した「パンドラ文書」に基づく取材成果を公表した。

 租税回避地とのつながりが判明した政治家や政府高官は91カ国・地域の330人を超える。日本の政治家の名前は現段階では見当たらないという。

 租税回避地を巡る規制は「パナマ文書」報道などを受けて強化されてきたが、富裕層だけが特権的に利用できる「抜け道」は依然として残されたままだ。不公平の是正に向け、日本は国際社会の対策づくりに主導的な役割を果たしていくべきだ。

 文書などによると、アブドラ国王は回避地に設立した企業36社を通じ、米英両国で14の不動産を購入。時期は中東で政権崩壊が相次いだ2011年以降に集中していた。

 一方、首相退任後に中東和平特使を務めていたブレア氏は、バーレーンの閣僚の家族から、ロンドンにビルを保有する回避地の法人を買収。ビルを取得するのに比べ40万ドル(約4400万円)以上の課税を免れた。

 いずれもそれ自体は「違法」「不正」とは言えないにしても、国民の目に触れては具合の悪い蓄財や「節税」であったことは否定できまい。

 16年の「パナマ文書」報道以降、国際的な税逃れに対しては一定程度、包囲網の整備が進んだ。

 代表的なのが、タックスヘイブン対策税制だ。回避地や税率の低い国・地域に設立された実態のない海外子会社の所得は、親会社の所得と合算して課税対象の所得として扱われるようになった。

 さらに経済協力開発機構(OECD)が策定した「共通報告基準(CRS)」を通じ、税務当局が国内居住者の海外金融機関の口座情報を収集することも可能になった。

 だが、現在CRSに参加しているのは96カ国・地域。回避地自体もなくなってはいないため、カンボジアなどCRSに参加していない国を組み合わせた税逃れは、まだまだ根絶できていない。

 巨大企業や富裕層の税逃れによって、世界の国々が失っている税収は年間4270億ドル(約47兆円)に上るとの調査結果もある。世界的に経済成長が鈍化する中、再配分の公正をゆがめる行為は決して許されない。

 回避地の利用者でもある政治指導者が自ら対策強化に乗り出すことは期待しがたい。有力者にのみ開かれた「抜け道」をふさぐため、日本は国際世論を喚起し、回避地への圧力を強める必要がある。

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