社説(10/8):大谷選手の大活躍/コロナ禍に夢と希望与えた

 長い歴史と伝統がある米大リーグでも、規格外の活躍ぶりは特筆すべきものだった。記録を残しただけでなく、躍動したプレーの数々は多くの人の記憶に深く刻まれたことだろう。

 エンゼルスの大谷翔平選手(岩手・花巻東高出)が投打の「二刀流」のシーズンを終えた。

 そのすごさは、数字が物語る。投手としては23試合に登板し、9勝2敗、防御率3・18。打者としては158試合に出場し、打率2割5分7厘、46本塁打、100打点、26盗塁だった。

 ベーブ・ルース以来、103年ぶりとなる「2桁勝利、2桁本塁打」や日本人初の本塁打王は惜しくも逃したものの、打点のほか、安打数(138)、得点(103)、投球回数(130・1)、奪三振(158)の投打5部門で「100」を上回るという偉業を達成した。

 同じ二刀流から「ルースの再来」と呼ばれることが多かったが、分業制が確立された現在と当時では野球を取り巻く環境は大きく変わっている。快進撃が続くにつれ、「ルースの再来」ではなく「オオタニの出現」と別次元で捉えられるようになった。

 プレー以外の姿も印象に残った。終盤戦、四球攻めに遭っても笑顔で一塁に歩いた。グラウンドに落ちているごみをさりげなく拾う姿もしばしば見られた。野球をすることが楽しくて仕方がない。野球少年のような純真さが多くの人の心をつかんだ。

 その存在は日米で社会現象にもなった。米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」に、日本からは女子テニスの大坂なおみ選手、建築家の隈研吾氏と共に選ばれた。関西大の宮本勝浩名誉教授(理論経済学)の試算によると、日米両国の経済効果は約240億円に上る。

 新型コロナウイルスの感染拡大で社会に閉塞(へいそく)感が漂う中、その活躍をテレビで見て、勇気や力をもらった人は少なくないはずだ。二刀流を目指す野球少年も増えるだろう。明るい話題が少ない中、希望の光として輝きを放ち続けた功績は大きい。

 もっとも、2018年の渡米後は、右肘や左膝の手術などがあり、なかなか満足のいくシーズンを送ることができなかった。地道な筋力トレーニングでつくり上げた強靱(きょうじん)な肉体を土台に、パワーが必要な本塁打が出やすいスイングに改造したことなどが飛躍の要因と言えよう。

 現地では、所属するアメリカンリーグの最優秀選手(MVP)に選出されるのは確実との見方が多い。受賞すれば、イチローさん以来の快挙となる。

 ただ、才能あふれる27歳の青年は発展途上で、今季の成績はあくまでも通過点にすぎない。体調さえ万全ならば、来季は今季以上の活躍を見せてくれるはずだ。

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