デスク日誌(10/8):ブランド失墜

 「なるほど。そういうものか」。思わずうなった。9月29日投開票の自民党総裁選に絡み、東北各地で市民に感想などを尋ねた取材メモを見た時だった。

 決選投票に臨んだ2人はいずれも世襲議員だ。権力の固定化に一定の批判があると踏んでいたが、思いの外「世襲か否かは関係ない」「政策や実力本位」という回答が目立った。

 前任の菅義偉氏は秋田のイチゴ農家に生まれ、「たたき上げ」を自認していた。人々が注目したのは売りとされた実務能力だけではなかったはずだ。市民感覚を共有し、心から納得できる政治の実現にも期待を寄せたのではなかろうか。

 首相として内閣を率いた菅氏は、支持率低下にあえいで1年での交代を余儀なくされた。「結局政治は変わらなかった」。今回の取材結果に、国政に対する諦念、失望が透けて見えるような気がした。

 世襲議員自体を否定するつもりはない。が、一族や家族内での権力継承が増えるのは健全な民主社会とは言い難い。輝きを失った「たたき上げブランド」。徒手空拳で政治を志す人々の前途が閉ざされないよう願っている。(報道部次長 斎藤秀之)

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