<耕論・宮城知事選/被災者支援の実相>(4完)個別再建、「先進地」発信後ろ向き

災害ケースマネジメントの法制化を政党に要望し、記者会見する支援者や弁護士=9月、宮城県庁

 「先進地」にもかかわらず、県政トップの消極性は相変わらずだった。

 「市町村の実施が適切であり、国による制度化や十分な財源の確保が不可欠。全国知事会を通じて導入を要望している」

 9月の宮城県議会。東日本大震災の被災者支援で注目された「災害ケースマネジメント」を巡り、村井嘉浩知事はこれまで同様、県独自の制度化を否定した。

 災害ケースマネジメントは被災者一人一人の課題に応じ、住宅や生活の個別再建を後押しする手法だ。

 震災では、仙台市が約1万世帯の仮設住宅を全戸訪問したほか、石巻市の支援団体が壊れた家に長期間暮らす約6500世帯の在宅被災者に実践。宮城は全国の先駆けとなった。

 熊本地震(2016年4月)や西日本豪雨(18年7月)の被災地でも展開され、18年4月には鳥取県が全国で初めて制度化した。

 村井知事が言及した知事会による国への要望も、鳥取の提案で具体化した。「制度を国全体に広げ、復興がままならない方々の未来を照らしたい」(鳥取県危機管理政策課)。すっかり、お株を奪われた。

修理し切れず劣悪なまま

 災害ケースマネジメントが期待される背景に、制度の不備と、それに起因する在宅被災者の存在がある。

 被災住宅への国の支援制度は(1)災害救助法に基づく応急修理制度(2)被災者生活再建支援法の支援金-が主だ。被災者が申請しなければ活用できず、支給限度額も最高で全壊への支援金300万円にとどまる。

 近年、支給対象が広がったものの半壊以下(損害割合30%未満)への支援は乏しい。修理し切れず劣悪な住環境に苦しむ人々が、災害のたびに生み出される。

 災害復興に詳しい塩崎賢明神戸大名誉教授(住宅政策)は「宮城県は在宅被災者の救済に取り組むとともに『当事者』として制度の拡充や抜本的見直しを主張するべきだ」と訴える。

 だが、震災復興計画の11~19年度の取り組みを検証した県は「あくまでも計画の検証」(総合政策課)として、一連の問題を報告書に記述しなかった。被災15市町と情報共有を図る在宅被災者検討会議も、2年前の第3回を最後に開かれていない。

後世に何を残せたのか

 1923年の関東大震災後、経済学者の福田徳三が唱えた「人間復興」。人々の暮らしとなりわいの再生を根本とし、村井知事が掲げる「創造的復興」とせめぎ合う概念として語られてきた。

 在宅被災者の存在は、その視点が今なお切実であることを突き付ける。

 県内で災害ケースマネジメントを続ける支援団体や弁護士らは8月末、法制化を各政党の県組織に要望した。蓄積された知見と、取り残される被災者-。いずれも直視していないように映る県を飛び越えて、国政に働き掛けた。

 塩崎さんは、被災者生活再建支援法の制定を思い起こす。阪神大震災後、兵庫県も加わった地元の運動が国会を動かした。対照的に「東日本大震災では、後世の被災者のために何を残せたのか」。

 「創造」の成果を誇る最大被災県に、その問い掛けがずしりと響く。
(報道部・東野滋)

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