社説(10/10):内閣基本方針に「震災」/復興への本気度 注視したい

 岸田文雄首相は内閣の基本方針に東日本大震災からの復興を盛り込み、「東北の復興なくして日本の再生なし」と明記した。

 昨年9月の菅義偉内閣の基本方針では、震災と東京電力福島第1原発事故の記述が消え、復興を軽視しているのではないかと波紋を広げた。岸田内閣はその反省を踏まえたのだろう。ただ、言葉だけではなく、まだ途上にある復興に、国がどれだけ力を尽くすのかを注視していく必要がある。

 西銘恒三郎復興相、萩生田光一経済産業相、山口壮環境相の復興関係3閣僚は、就任記者会見でそろって復興に向けた考えを示した。「第1原発事故で避難する住民の帰還促進」「第1原発の処理水海洋放出方針の理解醸成」などと具体的に取り組む課題を提示したことは評価できよう。

 問題は実行力だ。原発事故による痛手が続く福島県の復興では、第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水の処分方法と住民帰還は喫緊の大きなテーマとなっている。

 自民党総裁選では、立候補した高市早苗氏(現政調会長)が告示前、処理水の海洋放出に慎重な姿勢を示した。これを機に、立候補した4氏の間で福島の復興に関して活発な議論が交わされることが期待された。だが、論戦は低調に終わり、高市氏も処理水に関する持論を声高に主張することはなかった。

 強引とも言える形で今年4月に海洋放出の方針を決めた政府への不信感もあり、漁業関係者は反対の声を強めている。基本方針を決めたから議論は終わりではない。原発の廃炉に向けたステップである処理水について、政治の場で議論を尽くさなければならない。公示が迫った衆院選で、各候補者がこのテーマをどう取り上げ、どんな訴えをするのか。目と耳を凝らしたい。

 もう一つの課題である住民帰還についても同様だ。原発事故から10年以上がたった今もなお、多くの県民が古里を離れて暮らすことを余儀なくされている。政府は放射線量が高く原則立ち入り禁止の帰還困難区域のうち、除染やインフラ整備が進む一部地域「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」に関しては、2020年春~23年春に避難指示解除の方針を決めている。

 問題は、除染が進まない復興拠点外だ。政府は帰還希望の住民の自宅周辺から除染を進める考えだが、課題は山積している。除染対象は帰還希望者の生活圏にとどまり、範囲は点在化する懸念がある。「全域を除染してもらわないと帰れない」という住民の声も根強い。

 原発事故で荒らされた古里に帰れない住民の切実な声を政府にどう届けるか。政治家の出番だろう。国政の場で改めてしっかり議論してもらうためにも、衆院選は重要な機会となる。

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