(88)長靴が茸山から戻りけり/宮本 佳世乃(1974年~)

 茸(きのこ)狩りから帰ってきたんでしょ、と言われたらそれまで。ですが踏み込んで想像してみましょう。帰るのは人ですが、書かれているのは戻ってきた長靴だけです。きっと靴には泥や苔(こけ)などの山の証しが付いていて、茸を探す道のりの険しさ、楽しさを物語っています。戻った人からは道中の話を聞かされるかもしれませんし、籠いっぱいの茸の下準備を手伝わされるかもしれません。食卓に並ぶおいしい料理の湯気までが、この句の期待と楽しさです。句集『三〇一号室』より。(及川真梨子)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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