社説(10/12):台風19号から2年/水害多発 減災文化定着を

 2019年10月12日から13日にかけて、宮城、福島両県をはじめ東日本に甚大な被害を与えた台風19号豪雨から2年になる。

 台風は関東、東北を縦断し、各地で川の氾濫や土砂災害を引き起こした。犠牲者は東北だけでも岩手、宮城、福島3県で62人に上る。

 自宅のほか、避難や見回り中に浸水や土砂崩れに巻き込まれた人もいた。浸水想定区域が設定されていない中小河川の氾濫や、警戒区域に指定されていない場所で土砂災害が発生するといった課題も浮き彫りになった。

 一方で、大規模な浸水被害を受けながら、犠牲者を出さなかった地域もある。被災当時、105世帯が暮らしていた宮城県大郷町中粕川地区だ。地域を流れる吉田川の堤防は13日朝に決壊し、住宅100棟が全半壊した。

 犠牲者ゼロの背景にはさまざまな要因が考えられる。中粕川では1986年の8・5豪雨など過去の被害が語り継がれ、住民の危機意識が高かった。堤防決壊の前日、町は各世帯に整備した戸別防災無線で早めに避難情報を出し、自主防災組織と消防団の見回りの動き出しも早かった。

 住民の話を聞いて感服したのは、それぞれが「大丈夫だろう」と思いつつも、避難準備・高齢者等避難開始の早い段階で避難所や町外の親類宅に避難を始めた点だ。

 ただし、その行動は偶然ではなかった。住民は以前から水害が心配されるような大雨のたびに避難を繰り返してきた。2年前も避難情報や自主防災組織などの声掛けを受けて、いつも通り避難した。

 行動の根底にあるのは、地域で育んできた「大雨のときは避難するもの」という文化。普段は田畑を潤し、たまに暴れる川と上手に付き合う中粕川の知恵を、他の地域も参考にしてはどうだろうか。

 降雨に加え、川の水位に注意が必要なことも台風19号の教訓の一つだった。雨がやんでも、上流などの状況により河川が増水、氾濫する可能性はある。実際に吉田川の堤防が決壊したのは雨が上がった後だった。

 通信技術の発達により、川の情報はスマートフォンなどで簡単に入手できる。国土交通省の「川の防災情報」は全国の主な川の水位や洪水予報、河川カメラ画像などを提供しているので、大雨の際はチェックしたい。

 台風19号では、企業の新たな動きも注目された。各地で鉄道が計画運休、商業施設が臨時休業を前もって発表した。こういった対応は社員や利用客の安全確保だけでなく、地域社会に備えを促す効果も期待できる。

 台風は被害が出るまで時間の猶予がある災害だ。早期の対応で犠牲は抑えられる。行政、住民、企業が命を守る取り組みを積み重ね、それが当たり前になった時、減災文化は根付く。

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