(89)イエスよりマリアは若し草の絮(わた)/大木 あまり(1941年~)

 幼いイエスを抱いた「聖母子像」など絵画や彫刻のマリアは皆若い。磔刑(たっけい)で死んだイエスを抱く絵の後の姿はどこにもない。イエスの死後も生きたマリアだが、聖母として信仰の対象になったマリアの老いを描くことはできなかったのだろう。「草の絮」は秋草の穂のわた毛で、風に乗って遠くへ飛んでいく。子を失った悲しみに暮れる母に、わた毛のように自由で心安らかなときは訪れただろうか。その後のマリアへの思いのこもる句である。句集『火のいろに』より。(永瀬十悟)

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら
秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


企画特集

先頭に戻る