河北春秋(10/13):いとこと岩沼市の金蛇水神社の境内を歩いて…

 いとこと岩沼市の金蛇水神社の境内を歩いていたら、白い蛇がこっちに向かってやってきた。「生意気なやつだって、頭の上でくるくるっと回して地べたにたたきつけたら延びちゃった」。中学生時代の思い出だという▼白い蛇は神の使いだという伝説がある。「いま天罰下って、噺家(はなしか)なんかになっちゃった」。両親が宮城県出身、自身も戦時中に岩沼の親戚宅に疎開するなど、縁の深い落語家柳家小三治さんが思い出を『別冊太陽』に書いていた▼同書のインタビュー。高校時代は何を考えていましたか。「ただ、面白おかしい事を考えていた」。文化祭では何を。「3年生の時は落語」。天性の資質に恵まれ、しかし親には大反対され、それ押し切って落語の道に進んだ人らしい▼若い時分、五代目小さん師匠から「お前の噺は面白くねえな」と言われ、この小言を大事にしていた。「落語は笑い話じゃねえんだ、落語はお噺なんだ」。師匠のこの言葉も「これはね、奥が深かったですね」と小三治さん▼急な訃報が届いた。「今日は良かったなんて思ったことがない」と精進を続けた人間国宝は直前まで高座を務めた。何とも粋で知的で上品な笑い。また聞けるのを楽しみに待っていたファンは多いはず。ぽっかりと心に空白ができた気分だろう。(2021・10・13)

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