社説(10/13):安否不明者の公表/広域災害へ足並みそろえよ

 災害時の安否不明者の氏名について、国が初めて指針をまとめ、公表に向けて検討するよう都道府県に通知した。

 人命の救助と捜索に役立てるため、個人情報保護法の例外規定を適用し、氏名公表の方向性を示したことは評価できよう。

 ただ、指針に法的な拘束力はなく、自治体側の姿勢が分かれる可能性がある。被災地の考え方がまちまちでは、被害が広範囲に及んだ場合、混乱が生じないか。氏名は原則公表を基準とし、統一した対応を求めたい。

 指針は先月まとまり、公表の可否判断に時間がかかる場合、可能な人から段階的に明らかにすることも考えられると、公表に積極的だ。

 統一基準は全国知事会が国に策定を求めた経緯がある。知事会が主導し、全国で足並みをそろえるべきだ。

 国の判断は7月に土石流災害に見舞われた静岡県の対処方法が大きく影響した。

 県は被災地の熱海市が集約するデータを基に安否不明者の名簿を公表し、広く情報を募った。その結果、本人や知人から連絡があり、捜索対象者の絞り込みにつながった。

 不明者の救助は時間との闘いだ。災害発生から72時間を境に生存率が下がるとされる。指針は氏名の公表が救助活動の効率化と人命の保護に貢献すると指摘した。

 氏名や住所などは個人情報保護法が利用と保護を規定する。本人の同意なく外部に提供することを原則禁止しており、災害時に公表しない根拠とする自治体が多い。

 一方で、「人命、身体、財産の保護のために必要な場合」は例外として公表を認めている。指針は、この例外規定の適用を検討するよう自治体に促した。

 不明者の救助活動を円滑に進めるため、氏名と住所は必須の情報だ。知事会が6月にまとめた指針も氏名公表に「公益性」があると明記した。

 知事会は被災現場や被災者の事情が異なることを理由に画一的な対応を求めることを断念したが、自治体側には多発する広域災害を懸念し、統一基準の必要性を唱える声が根強い。

 指針の提示後、千葉県は安否不明者の氏名や年齢などを原則公表する方針を決めた。今後、各地で判断が示されるだろうが、氏名公表に公益性を認める以上、統制が取れない事態は避けるべきだ。

 指針が言及していない死者の扱いも分かれている。個人情報保護法は、個人情報を「生存する個人に関する情報」と定義する。すなわち死者の情報は保護の対象外であるが、災害時に「遺族の意向」を理由に公表しない例が相次いでいる。

 根拠があいまいなまま非公表のケースが増えれば、災害の検証と犠牲者の生きてきた証しを後世に伝えることが困難になる。実名公表の原則に立つ統一基準が不可欠だ。

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