「お試し」実は定期購入 コロナ下、詐欺的な悪質商法目立つ

 新型コロナウイルス禍の中、巧みに不当な契約を結ばせるなど、詐欺的手口による消費者トラブルが目立っている。自分や家族が被害に遭わないために何ができるのか。消費者相談の事例と被害者の心理傾向を取材し、対策を探った。
(生活文化部・片山佐和子)

20代の被害が多い「もうかるノウハウ」

 仙台市青葉区の市消費生活センターによると、2020年度の契約トラブルなどの相談件数は6139件(前年度比96・5%)。

 全体の件数は少し減ったが、「健康食品や化粧品の通販を『お試し』で申し込んだら継続的な購入契約だった」といった「定期購入」の増加が際立ち、399件と2年前の約2倍に上った。9割超をインターネット通販が占める。寺田光代・相談啓発係長は「電子商取引(EC)の拡大で売買の形が複雑になり、悪質商法の手口も巧妙化している」と説明する。

 年代別で見ると、相談者は70歳以上が約2割と最多。屋根や外壁修理の訪問販売、インターネット回線接続に関する電話勧誘の相談が目立つ。

 副業や投資など「もうかるノウハウ」を販売する「情報商材」の相談は20代に多い。コロナ禍で生活不安が高まったことが一因とみられるという。

来春からは18、19歳も親の同意不要に

 来年4月には成人年齢引き下げが控え、18、19歳も親の同意なしに多くの契約を結べるようになる。進学や就職で交友関係が広がり、マルチ商法などのターゲットにもされかねない。

 「注意喚起に力を入れたいが、コロナの影響で出前講座の機会が減った」と寺田係長。センターは市教委や一部の大学と連携し、教員研修や学生への個別メール送信などを通じて啓発に力を入れる。

 消費者庁はチェックリスト(表)で自分の「だまされやすさ」を把握するよう呼び掛ける。合計点が30点未満と低リスクの人も、4人に1人は勧誘による購入や契約をする傾向があり、油断は禁物だ。どこかおかしいと思ったら、最寄りの消費生活センターなどに早めに相談しよう。

危ない楽観思考、手口知り相談先の確保を

 消費者トラブルに遭いやすい人の特徴や、被害防止のために大切なことは何か。山形県警や大阪府警の防犯対策に協力する、東北大大学院文学研究科の荒井崇史准教授(社会心理学)に聞いた。

 消費者をだます手口は、特殊詐欺やマルチ商法、投資詐欺などさまざまあるが、基本的には変わらない。

 加害者は相手の不安や焦り、恐怖を喚起して金銭を払わせる。例えば子どもや孫をかたる振り込め詐欺は、偽の警察官や弁護士らを登場させて権威付けし、「大切な人が緊急事態だ」と切迫した状況を装って焦らせる。その時々の社会不安も悪用する。

 対策を考える上で、山形県警が昨年実施した架空請求詐欺の被害者と、被害を見破った人への聞き取り調査が参考になる。結果を分析したところ、悩みを相談しない人や「自分は大丈夫」と楽観的で何も対策を講じない人が被害に遭いやすい傾向があった。

 未然に防ぐには(1)だます手口の理解(2)留守電設定などの対策(3)周囲への相談-が重要だ。一つでも自ら対策することが詐欺への耐性を強める。周りの「それ、詐欺じゃないの?」というひと言も役立つ。

 特殊詐欺は高齢女性の被害が目立つ。ただ、性別と被害の因果関係は不明で、ほかの家族より在宅時間が長いといった生活スタイルが影響した可能性がある。

 若者も架空請求のターゲットになりやすい。アダルトサイト閲覧など羞恥心をあおる傾向があるので、匿名で相談できる窓口をもっと周知した方がいい。

 情報発信も重要だ。警察による詐欺電話の音声公開など、具体例の提示は興味を引きやすい。ただ、だまされやすい人はあまり関連情報を見ないので発信が届きづらい。例えば独居高齢者に対し、民生委員や配食サービス業者が啓発チラシを手渡したり、留守番電話設定を呼び掛けたりする自治体がある。日常的に接する人を介した働き掛けは優れた取り組みだ。

[荒井崇史(あらい・たかし)氏]筑波大大学院博士課程修了。科学警察研究所期間業務職員、筑波大特任助教、追手門学院大准教授などを経て、2018年から現職。栃木県出身。41歳。

主な電話相談先

・国の消費者ホットライン「188」

 消費者トラブル全般
・警察相談専用ダイヤル「♯9110」

 悪質商法や特殊詐欺など
・NPO法人「消費者市民ネットとうほく」(仙台市)

 来年2月まで月2回、弁護士の無料電話相談を実施。直近は今月28日午後1~4時で匿名可。当日の連絡先は022(341)2010

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