(94)胡桃割る丸ごとの淋しさを割る/塩野谷 仁(1939年~)

 「割る」という言葉が繰り返されています。このリフレインの力で「丸ごとの淋(さび)しさ」は、胡桃(くるみ)を指していると受け取ることができます。小さな茶色い球体を見つめながら得た味わいを、詩的に表現したと捉えることもできるでしょう。しかし胡桃の中に発見した孤独は、やがて自分自身の心ともシンクロしていきます。ぱきんと割れた殻の中からは、渋みのある滋養にあふれた実が出てきます。私の殻が割れた時、そこで得られるものもあるはずです。句集『私雨』より。
(及川真梨子)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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