看護・介護の現場で負担長引く 変わらぬ生活「もう限界」

変異する民意 2021衆院選(2)

訪問先で業務に当たる加藤さん。介護職の待遇改善は長年の課題だ=14日午後、仙台市太白区

職場明かさず

 「ノックした? 聞こえなかったんだけど」

 「部屋の明かり、まぶしいよ。何とかしてくれ」

 仙台市の病院の新型コロナウイルス病棟で、看護師安藤加奈さん(34)=仮名=に入院患者から乱暴な声が飛んだ。感染急拡大で患者が増えた今夏のことだ。

 ワクチン接種が進んで高齢の患者が減り、50代以下が多い。20代も目立つ。「体が動くのに隔離されてイライラするのは分かる。受け止めるのも仕事だけど、強く言われると落ち込む」

 常に防護服、ゴーグル、ヘアキャップ姿。炎天下の病院玄関で感染者を運ぶ救急車を待つだけで汗が噴き出る。感染防止のため病棟で水は飲めず、汗も拭えない。2重の手袋を外した手は、ふやけて真っ白だ。

 控室のテレビから連日、東京五輪・パラリンピックの映像が流れた。「五輪で人が動いたから感染者が増えたんだよ」。心の中で悪態をついた。

 コロナ発生直後から病棟勤務が続く。友人や親には内緒だ。「不安にさせたくないし、誇るようなことでもない」。夏休みに夫と予定していたツーリングは中止した。夫とは久しく外食すらしていない。

 五輪は終わり、首相も交代した。世間は移ろうが、自分の生活は変わらない。

 「こんなに長引くとは思わなかった。もう限界。『助けて』って叫びたい」

補助打ち切り

 訪問介護事業所と保育所を運営するハートワンケアセンター(仙台市太白区)社長の加藤勢津子さん(58)は7月、市に「本当にもらえないのか」と電話で尋ねた。ホームヘルパーがコロナ予防で使うマスクや消毒液などの購入補助金が本年度、打ち切られた。

 市の担当者は「事業所で感染者が出た場合などは支援する」と返答した。保育士向けの予防費補助は本年度も続いている。「この差って、何なの」と思う。

 加藤さんも介護現場に出る。多い日は1日10件近くある。朝8時から夜10時まで分刻みで予定が埋まる。

 ワクチンの1回目接種を受けたのは9月下旬。方々の病院に300回以上電話して、やっと確保した。

 コロナ下、社会生活の維持に不可欠な労働者「エッセンシャルワーカー」は拍手でたたえられたが、実感はない。「訪問介護職は含まれていないんじゃないの」と自嘲する。

 衆院が解散された14日も朝から利用者宅に赴いた。前夜10時まで働き、疲れは取れない。「選挙のことを考えたいけれど、余裕がない」とつぶやいた。

「働きに見合った報酬」求める声

 政府はワクチンの優先接種対象に高齢者施設などの介護職を指定する一方、在宅サービスに従事する訪問介護職は含めていない。

 田村憲久前厚生労働相は2月の国会答弁で「施設はクラスター(感染者集団)が発生してもサービスを提供する必要がある。在宅サービスは事業者を変えるなど別の対応を取れる」と理由を説明した。

 訪問介護事業者などからの要望を受け、政府は3月、自治体が独自に対象に加えることを認めた。仙台市なども導入したが、訪問介護職の接種は進んでいない。

 介護職員らでつくる労働組合「日本介護クラフトユニオン」(東京)が夏に実施したワクチン接種調査では、職員全員が2回接種した在宅サービス事業者は12・6%で、高齢者施設の71・0%と大きな開きがあった。

 コロナ禍で心理的負担が大きい介護職は待遇改善を切望する。連合が今春、訪問介護職に「いま求めるもの」を尋ねた調査結果(グラフ)では「命を預かる働きに見合った報酬」(73・6%)が最多だった。

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