(95)月天心貧しき町を通りけり/与謝 蕪村(1716~1784年)

 この句は、寝静まった貧しい町の上を、月が照らしながらゆっくりと移っていく景と思い込んでいた。あるとき、通っているのは蕪村自身ではないかと考えた。「月天心」で切るとそう読める。主体が月か人かの違いであるが、前の読みは屋並みの低い家々を包み込むように照らす月の美しさが、後の読みには「貧しき町」の庶民のつつましい暮らしの息遣いと、それに共振する蕪村を感じる。どちらにも読めそうなのが、この句を味わい深くしている。『蕪村句集』より。(永瀬十悟)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。


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