飲食店、いまだに悪者扱い 見て見ぬふりの政治に怒り

衆院選 暮らしの現場から(1)経済再生

 新型コロナウイルス下で初の政権選択となる衆院選(31日投開票)が19日公示され、東北各地で論戦が始まった。冷え込んだ地域経済の再生は待ったなし。子どもの貧困、米価下落など課題は山積する。政治に悲痛な叫びを上げる暮らしの現場から、苦境に立たされる人たちの今を追った。

感染対策を徹底した店内で来店客を迎え入れる橘内さん(手前)と麻生さん=仙台市青葉区国分町2丁目

 「第5波」は収束しても、一度離れた客足は簡単には戻らない。

 東北一の歓楽街、仙台市青葉区国分町。居酒屋「蛍火(ほたるび)」は宮城県の時短要請解除に合わせ、今月1日に再開した。待ちに待った通常営業。だが、カウンターと個室を合わせ、約30席ある店内は空きが目立つ。来店客が2、3組の日もある。

 「通常に戻っても売り上げはコロナ前の半分だ。厳しい状態は変わらない」。店を経営する橘内佳成さん(46)は頭を抱える。

 2013年に国分町に店を構え、仙台名物の牛タンや熊本直送の馬刺し、東北の地酒を売りにする。順調に常連客を増やしてきたが、感染症流行で暗転した。

 昨年末から今年9月末までの断続的な休業・時短要請に全て応じた。家賃は共益費を含め月36万円。仕入れ業者と関係を保つため、時短後すぐには飲食料品の納入量を減らさず、余ったら賄いに回した。従業員6人の人件費もかかる。1日2万5000~4万円の協力金では到底足りない。

 橘内さんは時短が解除された今も実家が営む青葉区の飲食店を手伝い、自身の人件費を浮かせる。「なかなか蛍火に専念できないのが悔しい」と唇をかむ。

常にやり玉

 橘内さんの不在時に店を切り盛りするマネジャーの麻生剛久(よしひさ)さん(46)は店の窮状にいら立つ。「飲食業界の現場の苦労を政治は見て見ぬふりしている」

 政府はコロナ対策で人流抑制策を重視。マスクを外して会話する機会が多い酒類提供店への対応を柱に据えた。自治体も呼応し、宮城でも感染拡大のたび、休業・時短要請が繰り返された。やり玉に挙げられるのは、いつも国分町周辺だった。

 蛍火は感染対策に力を入れ、県の独自認証を7月6日に取得。手指消毒や検温の徹底に加え、座席の間に透明な仕切りを置くなど対策は30項目を超える。

 それでも反転攻勢の機会すら見いだせていない。

 「これだけ対策を講じても、いまだに国分町とコロナ感染が結び付けられる。悪者扱いされたままだ」。橘内さんは、やり場のない怒りを心の内に募らせる。

著しい疲弊

 「人流抑制一辺倒」とも言うべき政府の感染対策は、地域経済を立ち直り難く疲弊させた。10月に入りワクチン接種の2回完了が全人口の6割を超え、ようやく経済再生との両立に向けて重い腰を上げた。

 岸田文雄首相は接種証明を使った行動制限の緩和、雇用調整助成金の特例延長などを打ち出す。懸念される冬の「第6波」到来を見据え、与野党はコロナ対策を前面に舌戦を展開する。

 「休業・時短を繰り返すだけでは、つぶれる店が増えるだけ」と各党にくぎを刺す橘内さん。麻生さんも「飲食店は厳しさを増すばかり。公約は必ず実行してほしい」と注文を付ける。
(報道部・布施谷吉一)

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