デスク日誌(10/21):幻の一本!

 五輪で忘れ難いのが、「世紀の誤審」と呼ばれた2000年のシドニーでの柔道男子100キロ超級決勝。

 篠原信一選手の絶妙の技「内股透かし」が認められず、フランスのドイエ選手に敗れた。スポーツ面の担当だったが、見出しがうまく付かない。刻々と迫る降版時間。隣席のデスクのOさんが見かねたかのように言った。「篠原、幻の一本!」

 Oさんは当時、硬面(かためん)の支柱的存在だった。教わったことは数え切れない。中でも「短い言葉・字数での表現」を整理の鉄則と強調していた。あの日、実況放送直後に、超一級の見出しで試合内容を言い表したのには心底驚いた。鉄則の実践と模範。スポーツは専門外と謙遜(けんそん)するOさんに、格の違いを思い知らされた。

 「幻の一本!」。審判員の判定には一切触れず、涙ながらに篠原選手が語った「弱いから負けた」と並ぶ名言だと確信している。

 東京五輪では、大野将平選手の「何か心が動く瞬間があれば光栄に思う」が染みた。本来ならば日本武道館で観戦するはずだった。『JUL 26/階層 Level 1/列 Row D…』と記されたチケットを手に、感涙にむせんだ。
(整理部次長 長内直己)

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