デスク日誌(10/22):秋霜の記憶

 けたたましいクラクションを鳴らしながら、東京地検特捜部の出頭要請を受けた前福島県知事(当時)が車で出ていく。15年前のあす23日、当時赴任していた郡山市にある前知事の自宅前で喧騒(けんそう)の中、正反対の二つの感情に襲われた。

 一つは汚職という頂点に達した捜査への緊張感。もう一つは、家宅捜索や出頭への警戒に一区切り付くという安堵(あんど)感だった。夏すぎから霜降(そうこう)のころまで、応援で郡山入りした若手記者たちを深夜まで警戒に付き合わせ、心苦しく思っていた。

 徹夜の捜索はざら。取り調べ後に複数の自殺者も出た。容赦ない特捜部に抱いた畏怖と畏敬はその後、裁判所が最終的に賄賂額をゼロと認定する薄氷の有罪で疑念へと変わった。

 特捜検察の無理筋が通用した最後の事件かもしれない。数年後に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざんで威信は地に落ち、刷新は今も道半ばだ。

 政治とカネの問題は衆院選でも争点の一つ。近年、政官財学の不正に次々と切り込む特捜検察を「復活」と評価する声もある。かつてゼネコン汚職も摘発された東北が、再び活躍の舞台にならないことを願う。
(報道部次長 若林雅人)

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