(98)掌(て)の胡桃(くるみ)山河を蔵しゐるごとし/永島 靖子(1931年~)

 手のひらに包んだ胡桃を触覚で味わう。しわしわでごつごつで、軽いが中身がぎっしり詰まっているのが感じられる。作者はその感触を、「山河」を蔵しているようだ、と想像の翼を広げた。目をつむると、山河のドラマが浮かんでくる。山の頂に降った雨水が地中を浄化されながら通り、豊かな土の栄養と一緒に胡桃の木に吸い上げられ、この実を成長させた。五七五という小さな器に、大きな世界を詰め込むことができるのが俳句である。句集『袖のあはれ』より。
(永瀬十悟)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。

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