政治家のみなさん、SNSで対話してますか 仙台・国分町の人気ケーキ店に聞いてみた

「CHICCI」の筋野さん(左)と加藤さん

 会員制交流サイト(SNS)を使った選挙運動が活発だ。だが、実際に支持を広げる効果はどれほどあるのか。若者には届いていないのでは。そんな疑問をぶつけるべく、仙台市青葉区の国分町にあるインスタグラムのフォロワー1万人の人気ケーキ店を訪ねた。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)

「めっちゃ更新し、親しみやすさ出す」

 「若い人に投票に行ってほしいと、本気で思っているんですか。本当は投票率が低いままの方がいいと思っているんじゃないんですか」

 「CHICCI(チッチ)」は東北一の歓楽街の真ん中にある。老舗の「ショットバー2355」を日中、間借りしている。経営する筋野亮(まこと)さん(43)の言葉に一瞬たじろいだ。

 「そんなことはない。各陣営も選管も、新聞社だって、どうやって若い人に選挙に関心を持ってもらうか悩んでいる。SNSは重要なツールだと思っている」

 反論するほどに、筋野さんの視線が刺さる。「だったら、もっとやりようがあるでしょ」。そう言われているようだ。

 チッチの開店は昨年4月。元々経営していたこのバーはコロナ禍が直撃。妻の加藤千愛(ちえ)さん(29)と新たな業種で活路を開こうとしている。

 PRで始めた店のインスタには、手作りのチーズケーキやブラウニーの「映える」写真が並ぶ。メニューを紹介する短い動画はポップなアニメーションを駆使し、眺めているだけでハッピーな気分にさせる。1年ほどで1万人ものフォロワーを集めた。

 その陰に地道な営業努力があるのはリアルもデジタルも変わらない。加藤さんは「めっちゃ更新する。目に付く写真にする。親しみやすさを出す。一番いいのは、もっとフォロワーが多い、うまくいっている人のまねっこをすることですね」とこつを明かす。

 「作りたい、売りたいものより、お客さんが食べたいものを」が基本姿勢。写真に付く「いいね!」などの反応に目を配り、5種類ほどのラインアップを常に見直す。客は新商品が出ていないか定期的にインスタを見る習慣ができ、リピーターになっていく。

チョコレートブラウニー(左)とアップルシナモンブロンディ(各550円)

インスタの人生相談でファン増やす

 「親しみやすさ」を生み出すのは相談コーナーだ。バーで働いていた時の経験を生かし、フォロワーからの恋愛、仕事などあらゆる悩みや疑問に応じる。時に寄り添い、時にずばっと本質的な指摘をする語り口は長年の友人のよう。悩みに答えてもらった人はもちろん、やりとりを見ているだけの人も親近感を抱く。

 選挙の時だけではなく、有権者と双方向の関係を築いてファンを増やせている政治家はどれほどいるだろう。街頭演説の動画をユーチューブに投稿する候補は増えているが、再生回数は思うように伸びていない。

 「政策の中身が大事なのは分かるけど、知らない言葉ってそもそも耳に入らないですよね。海外に行った時みたいに」

 SNSなどを通じて興味・関心を引く以前に、加藤さんが指摘する通り政治家と若者の間に共通言語が成立していないとするなら、伝えるためのあらゆる努力が必要になる。言葉を言い換えたり、話をかみ砕いたり、身近な例え話にしたりだ。

CHICCIが間借りする「ショットバー2355」=仙台市青葉区国分町2丁目

「修造さんやフワちゃん、まねして」

 それは話者の熱量と言い換えることができる。「台本を読んでいるような演説は届かない。どれだけ自分の言葉で語っているか。松岡修造さん(スポーツキャスター)の言葉が入ってくるのも、そこじゃないですか」

 手っ取り早く動画の再生回数を伸ばしたいならやはり「先人の知恵を借りる」。一例は東京都の取り組みだ。人気ユーチューバーのフワちゃんが、新型コロナウイルス感染症対策について小池百合子知事と対談する動画は40万回以上再生された。親しみにくい行政用語をフワちゃんが通訳し、若者らに届けた形だ。

 「いいと思うものは恥ずかしがらず、堂々とまねする。まねても全く同じにはならなくて、その人らしさは必ず出ます」

 最後に、投票に行かない若者が増えていることをどう思うか尋ねた。

 「『彼氏と別れるべきか』『転職すべきか』といった相談は、実はもう答えが出ているんですよね。現状に満足しているのかと聞くと、大体の人はしていないと答えます。だったら、文句を言っているだけじゃだめで、まず自分の行動を変えないと違う未来は訪れないよって」

 「それって投票も同じですよね」

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