低迷する米価に出来秋も喜べず 将来像示さない政治に病根

衆院選 暮らしの現場から(5)農業政策

浮かない表情でコメの集荷に追われる佐藤さん=14日、栗原市志波姫

 今月14日、快晴の出来秋を迎えた宮城県栗原市志波姫の田園地帯。コメの収穫に追われる専業農家佐藤弘毅さん(66)の表情は曇ったままだ。

 全農宮城県本部が9月に示した2021年産ひとめぼれ(60キロ)の概算金は9500円。1万円の大台を割り込み、20年産より3100円安い。概算金は農協などが集荷時に農家に払う仮渡し金で、他のコメ取引価格にも影響を与える。

600万円減収

 今年の売り上げは約600万円も減る計算だ。佐藤さんは「怒りを通り越してあきれる」と肩を落とす。

 コメ農家の17代目として県農業短大卒業後の1975年、就農した。妻(63)、息子2人と農地約40ヘクタールでコメと大豆を栽培し、肥育牛約40頭を育てる。

 国の政策に協力して大豆転作に取り組み、飼料米作りも始めたが、余剰米は減らなかった。また概算金が暴落した。「政策失敗の責任を農家に押し付けるのは、あまりに理不尽」と憤る。

 この20年で宮城県産ひとめぼれの概算金が1万円を割ったのは、これが3度目だ。過去の2度はいずれも農業政策の大転換と重なる。

 最初は民主党政権が戸別所得補償制度を導入した2010年。10アール当たり1万5000円の生産費を支給するなど支援は手厚かったが、所得を下支えする制度が米価下落の圧力にもなった。概算金は過去最低の8700円に落ち込んだ。

 2度目は、自公政権が生産調整廃止を決めた13年の翌年の14年。過剰作付けに歯止めがかからなくなるとの警戒感が高まり、8400円に下落した。

 戸別所得補償制度から名を変えた経営所得安定対策も、約半世紀続いた生産調整も18年に廃止された。農家所得がさらに不安定になった今、3度目の1万円割れに見舞われた。

ばらまきはたくさん

 「コロナ禍の外食需要の落ち込み」「20年産米の在庫の高止まり」。国や全農はこう分析するが、佐藤さんは反論する。

 「コロナ禍に始まったことではない。問題の根っこは農業の将来像を示さず、施策の検証もしない政治にある」

 進む高齢化、再生産さえ困難な低い所得。集落の農家約40軒のうち、後継者がいるのは佐藤さんを含め3軒になった。集落の仲間が耕作をやめた田んぼを引き受けていたら、毎年1ヘクタールずつ栽培面積が広がった。次男(34)は「これ以上、家族4人では請け負えない」と嘆く。

 「ばらまきはもうたくさん。政治は若い農家が前を向ける10年先、20年先のビジョンを示してほしい」と佐藤さん。国民の命を守る国産ワクチンの開発が遅れ、海外に依存するしかなかったコロナ禍が、農業の行く末と重なって見える。
(栗原支局・門田一徳)

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