疑念、不信…揺らぐ真実 コロナ対策の説明不十分

変異する民意 2021衆院選(5)完

大学教員のユーチューブチャンネル画面を背景に、新型コロナワクチンへの疑問に答える厚生労働省のホームページ(左上)とソーシャルプラッツが宮城県などに提出した請願書(右下)のコラージュ

「陰謀論では」

 男性教員が唐突に切り出した。「新型コロナウイルスのワクチンが、これほど早く出回ったのはなぜか」

 6月、仙台市の大学のオンライン授業でのことだ。「ワクチンが不完全だからだ。それで接種後に大変な副反応が出る」と続いた。

 パソコンの画面越しに聞いた1年の男子学生(19)は「世界中の要職者と富裕層がワクチンを打っていない」という教員の説明に、ニュースで見たジョンソン英首相らの接種場面を思い出した。男子学生は「これ(教員の話)って『陰謀論』では」と感じた。

 教員は9月、取材に「接種後の死者が1000人を超え、ワクチンの安全性に疑問がある。死亡と因果関係はないと政府は言うが、納得できる根拠を説明していない」と語った。

 陰謀論。辞書には「強大な権力を持つ人物や組織が一般市民に知られないように不正な行為や操作を行っているといった推論・主張」(大辞泉)とある。昨年の米大統領選で民主党を「ディープステート(闇の政府)」と呼び、トランプ前大統領を支えた「Qアノン」の主張が代表的だ。

 米大統領選を巡っては、仙台市の別の大学の男性教員が真偽不明の情報を動画投稿サイト「ユーチューブ」のチャンネルで発信。教員所属の研究室が2月、苦言を呈する声明を研究科ホームページに一時掲載する事態が起きた。

 研究科は取材に「それ以上の詳細は答えられない」と口を閉ざす。教員は現在も時事評論や文化論などの情報を発信し続け、チャンネルには20万人以上が登録している。

 新型コロナ感染拡大の波を止められない政府や自治体の姿は、国民や住民から寄せられるはずの信頼を大きく揺るがしている。

社会にまん延

 陰謀論的な思想が広がる背景には「権力は真実を隠す」という人々の感覚がある。対策の試行錯誤が続くコロナ禍も、何が正しいかを曖昧にし、疑念や不信を社会にまん延させている。

 「マスク着用を推奨しないでほしい」「ワクチンのリスクも説明を」。6月、仙台市拠点の市民グループSOCIAL PLATZ(ソーシャルプラッツ)が市と宮城県に「科学的根拠のないコロナ対策の停止」を求める請願書を出した。

 昨年12月発足のグループにはコロナ対策に疑問を抱く宮城県と隣県の会社員や公務員、医療関係者などが集う。メンバーの政治信条はバラバラという。

 「政府や報道機関が言うことと異なる医学論文やデータがたくさんある。何かやましいことがあるんじゃないかと思ってしまう」。中心メンバーの一人でアート団体を運営する大河原芙由子さん(40)=仙台市若林区=が言う。

 「原発だって何十年も『安全だ』と強調されたが、そうじゃなかった。間違いに後から気付いても遅い」と続けた。
(この連載は報道部・大橋大介、岩田裕貴、古賀佑美、若林雅人が担当しました)

政府への信頼が急降下

 米広報会社エデルマンが日本や米国、中国など世界14カ国の国民を対象に実施した調査によると、日本では菅義偉政権下の5月時点で、政府や自治体に対する信頼度は政府が31%、自治体は47%。14カ国の平均は政府52%、自治体56%で、日本政府の低さが際立つ。

 政府に対する信頼度は、感染拡大前の昨年1月時点から調査を経るごとに下がり続けている。自治体への信頼度と比べても低下が著しい(グラフ)。それぞれのリーダーに対する信頼度も、感染拡大前に比べて「大幅に低下した」と答えた人が政府(首相)33%、自治体(首長)19%で、首相への信頼失墜ぶりが目立った。

 安倍晋三政権だった昨年5月時点の日本政府に対する信頼度は、昨年1月時点に比べて他の調査対象国が新型コロナ対応への国民の支持により軒並み上昇する中、唯一の低下を記録した。

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