震災関連予算、十分活用されず 政治に届かない被災者の叫び

 31日投開票の衆院選は東日本大震災から10年が経過して初の国政選挙となる。被災地では災害公営住宅の空き室が増え、自治機能の維持が難しくなるといった課題がより顕在化する一方、関連予算が十分に使われているとは言い難い。「現場を見て知ってほしい」。被災者の叫びが「被災者支援」を強調する政治に届くのか。

荒井東災害公営住宅であったイベントに参加した小野さん(右)。住民のつながりづくりに奔走する=17日、仙台市若林区

 最大被災地の石巻市。蛇田地区の新立野第2住宅(102戸)は大型商業施設に近い好立地だが、入居開始以来、最多の7戸が空いている。「高齢者が1人暮らしを続けられなくなるケースが多い」。第2住宅団地会長の増田敬さん(70)がうつむく。

 最近空いた1室は80代が介護施設に移り、70代が病気で亡くなった。人の気配がなく物置のように使われている部屋も散見される。空き室の割合が上がれば周囲の異変に気付きづらくなり、支え合いは難しい。つながりを守ることが重荷にもなる。

 「見守りやコミュニティー形成を切れ目なく支援する」「心のケアはこれからだ」。衆院選候補者の訴えが空虚に響く。

 復興庁の予算は必ずしも有効活用されていない。心のケアや交流事業に充てる2016年度創設の「被災者支援総合交付金」が使われた割合(執行率)は、毎年70~80%台にとどまる(グラフ)。20年度は過去最低の70・3%に落ち込み、予算額も年々減っている。

 「自治体からの要望額が減り、コミュニティー形成が進んだ」と復興庁は説明するが、増田さんの認識とギャップがある。交付金などを財源とする宮城県の補助制度は、集会所の物品購入に制約があって提出書類の作成も煩雑。利用をためらう人が多い。

 「気軽に活用できるようにしてほしい。本当に助けが必要な人に支援が届いているのか」。増田さんは国と自治体に問い掛ける。

ままならない共用部の掃除

 「入居して7年もたつのに隣の人を知らない」「相談相手がいない」

 仙台市若林区の荒井東住宅(298戸)で9月、支援団体も加わった懇談会があり、入居者が悩みを打ち明けた。町内会の加入率は58・5%で、他の災害公営住宅より低い。

 「近所付き合いが広がれば理想だが、現実はほど遠い」と町内会長の小野款さん(72)。収入超過世帯の家賃引き上げなどで現役世代が退去し、町内会役員の平均年齢は70歳を超えた。共用部の掃除もままならない。

 コロナ禍で困窮する学生に空き室を安く貸し、住民自治に若者の手を借りることができないか-。そんな提案を考えるほど現状に限界を感じている。

 「この先、若者と共存しないと団地は駄目になる。被災者の話を聞き、暮らしが少しでもまともになる政策を真剣に考えてほしい」
(報道部・柴崎吉敬)

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