(101)金鱗をこぼさぬ鯉の水の秋/上田 五千石(1933~1997年)

 「水の秋」は澄んだ水の美しい秋をたたえる季語。秋になると鯉(こい)の池の水も澄んでくる。緋(あか)や白や黒に交じってひときわ目に付くのは、金色の鯉だ。その金の鱗(うろこ)をこぼさないように、ゆったりと優雅に泳いでいる。作者には<これ以上澄みなば水の傷つかむ>という句もある。美しすぎる故に傷ついてしまいそうな秋の澄んだ水と金色の鱗の鯉。水面から地上へと顔をあげれば、こちらも赤や黄に色づいた紅葉が明るくまぶしい。一幅の日本画の世界である。句集『遊山』より。
(永瀬十悟)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。

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