宮城の4病院再編案 「にっせきさん」移転浮上、地元に激震

 新型コロナウイルス下で迎えた宮城県知事選は31日に投開票が行われる。地域の声は政治に届いているのか。現場を歩いた。

町内会長らに仙台赤十字病院の移転反対の署名運動を呼び掛ける広瀬会長(左)

住民と深い関わり

 仙台市太白区の仙台赤十字病院。39年前、丘陵地の八木山住宅団地に移転して以来、総合病院として地域の医療と健康を支え続けている。住民との関わりも深く、親しみを込め「にっせきさん」と呼ばれている。

 昨年8月、八木山地区に激震が走った。県が赤十字病院と東北労災病院(青葉区)、県立がんセンター(名取市)の連携・統合に向けた協議を始めた。今年9月には県立精神医療センター(名取市)を加え、4病院の再編方針に発展した。

 さらには知事選(31日投開票)で、現職が赤十字病院とがんセンターを統合して名取市、労災病院と精神医療センターを合築して富谷市に、それぞれ移転させることを公約に掲げた。

 八木山地区から赤十字病院が消える可能性がにわかに浮上。八木山連合町内会の広瀬博会長(80)は「住民が誘致運動に奔走した病院。地域とは密接な関係にある」と事態を危惧する。

地域防災でも連携

 赤十字病院は1982年、青葉区五橋から八木山に移転した。連合町内会はその7年前に移転話が出ると、すぐ期成同盟会を結成。隣の西多賀、向山両地区と署名活動を展開し、誘致にこぎ着けた。当時、八木山には大型の医療機関がなく、住民の悲願だった。

 時代が昭和から平成、令和と変わり、地域と赤十字病院の結び付きは決して医療だけではなくなった。

 東日本大震災を教訓にプロの視点で地域防災に参画する。2015年、地域防災組織「仙台八木山防災連絡会」に加入。防災訓練に医師や看護師が参加し、治療の優先順位を決める「トリアージ」や応急措置の流れを住民と確かめ合う。

 普段の会議に院長ら幹部が出席するほか、災害現場に派遣された職員が避難所の様子を伝え、教訓を還元する。町内会側も災害用簡易トイレ約2000セットを病院に寄付したり、病院の災害対応訓練で炊き出するなどし、連携を深める。

欠かせぬ存在

 まちづくりにも「にっせきさん」は欠かせない。今月23日、地域団体が開いたライトアップイベントでは、新型コロナウイルス対策の入場者の検温を病院職員が担った。院内の一角を住民の写真コンテスト会場に開放したこともあった。

 「赤十字病院あっての八木山。なくなるなんて考えたくもない」と広瀬会長。移転反対の署名活動に乗り出し、12月にも県と市に提出する。「明確な意思を地域から発信しないといけない」。16日に八木山小であった防災訓練で、町内会長らに協力を呼び掛けた。

 労災病院がある青葉区台原地区も事情は似ている。今年5月、同地区のJCHO仙台病院が泉区紫山に移転。そこへ労災病院の富谷市移転も視野に入れた4病院再編が降って湧いた。

 1954年の開院以来、地域と歴史を積み重ねてきた。台原町内会の安積惇会長(89)は「高齢者も多く住む。病院が近くあるだけで地域に安心感がある。移転は到底、受け入れられない」と不安を隠さない。
(報道部・古賀佑美)

仙台赤十字病院の医師らが参加した八木山地区の災害対応訓練=2016年10月、仙台市太白区
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