河北抄(10/28):暮れにみんなで寺の本堂を掃除し終えると、…

 暮れにみんなで寺の本堂を掃除し終えると、あろうことか仏壇に雑巾を1枚置き忘れている。「せっかくの仕事が台無しじゃないか」。怒鳴り声が上がると、すぐに誰かがこんな歌を詠みだした。

 <雑巾も当て字で書けば蔵と金 あちらふくふく こちらふくふく>。「拭く」と「福」を掛けた当意即妙な返しに、張り詰めた空気がいっぺんで緩んだ。

 福島県三春町の作家・僧侶の玄侑宗久さんが、仏教語にある「一転語」のたとえ話を楽しく説明してくれた。辞書は「進退きわまったときや、迷いの中にあるときに、ふとその場を転じてくれる語句」(日本国語大辞典)などと記す。

 来月15日に締め切りが迫る第5回仙台短編文学賞の選考委員。仙台・宮城・東北に何らかの関連がある、原稿用紙25~35枚程度の公募作の審査を担う。

 執筆が進むうちに「これは本当に自分が書いているのか」と戸惑うほどの境地に至るという玄侑さん。「小説は合理性を超えた体験ができるツールです」。物語への挑戦は、書き手自身にも局面打開の「一転語」をもたらすかもしれない。

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