挑んだ38歳、山深い町から「川上作戦」 連載・「小沢王国」の陰り

 10月31日投開票の衆院選岩手3区で、連続17回当選を誇る立憲民主党の小沢一郎が初めて選挙区で敗れた。比例代表東北ブロックで復活当選したものの、岩手に築かれた「小沢王国」の陰りは否めない。自民党の藤原崇が挙げた金星は、岩手県政界にも大きな影響を与えそうだ。(敬称略)

当選が確実となり、花束を受け取る藤原氏(右)=10月31日午後11時15分ごろ、北上市の事務所

(中)敵のお株奪い金星

 「歴史が変わる」。難攻不落と信じられた「王国」がついに陥落し、北上市の選挙事務所が沸き返った。

 衆院選投開票日の10月31日午後11時。立憲民主党の小沢一郎(79)を4度目の対決で破った岩手3区の自民党の藤原崇(38)は、ガッツポーズで歓喜に応え、支持者を見やった。「新人時代から10年支えてもらい、この日を迎えられた」

 藤原は2012年の初挑戦から3回連続で敗れたが、いずれも比例復活した。「安倍1強」という時代に恵まれたとはいえ「小沢さんに挑んだ多くの候補は大敗し、1度で去った。藤原は運を持っている」と地元秘書は評する。

不利を強みに

 出身は人口5200余と3区で最も少なく、山深い和賀川上流に位置する西和賀町。地盤のハンディも「中山間地を知る政治家」と強みに変えた。

 母校黒沢尻北高があり、和賀川下流域の北上市には藤原を囲む若手経済人らの勉強会がいち早くできた。年齢が近く飾らない人柄が若者を引きつけ、奥州市にも結成された。

 直近の4年間、藤原は復興政務官や予算委員会理事を務めた。「国際リニアコライダー(ILC)誘致や東日本大震災の復興状況などさまざまな話を聞ける」と参加者。「仕事に役立つ」と、小沢が大きな影響力を持っていた建設業界の関係者も集会に顔を出す。

 6月の通常国会閉会後は半分以上の期間を地元で過ごし、コロナ禍で苦しむ企業を精力的に回った。若手経営者の後援会「山宗会」会長の石川祐介(46)は「小沢さんがやらないことに着目し徹底した」と話す。

 会員制交流サイト(SNS)を巧みに使いこなし、地元のラーメン店の話題などを投稿。天下国家を論じる小沢と対照的だが、「人柄を分かってもらえる」と藤原。昨年秋は10前後だった「いいね」の数は最近、3桁に達した。

 選挙戦ではキャッチフレーズ「政権交代より世代交代」も効いた。公示後、テレビで小沢の演説を聴いた父利雄(68)のつぶやきだった。「まだまだ働ける」と反論する小沢陣営を巻き込み、世代交代論議を起こした。

 選対本部長には、かつて小沢を師と仰いだ元参院議員平野達男(67)。「1日60~70カ所街頭に立つ。小沢先生に教わった戦術が生きた」。平野の指揮で小沢流の選挙が徹底された。

 前回1万592票の大差がついた一関市対策として、やはり小沢とたもとを分かった元衆院議員黄川田徹(68)の元秘書を配置。今回は845票上回った。

政治力を誇示

 公示前には政治力を3区全域に知らしめた。地滑りで長期通行止めとなっている地元西和賀町の国道107号。錦秋湖サービスエリア(SA)周辺の住民が、SAから迂回(うかい)路の秋田自動車道に乗り入れできる特別措置が講じられた。「藤原先生に頑張っていただいた成果だ」。町長細井洋行(72)が公言した。

 選挙区をきめ細かく回り、川の流れのように山間部から都市部に支持を広げる「川上作戦」。小沢流選挙戦術の代名詞だ。そのお株を奪う戦いぶりで、藤原は金星を挙げた。

 小沢が異例の地元第一声をすると聞いた藤原は「どちらの訴えがいいか、県民に見てもらい判断を仰ぐのはいいことだ」。自民を2度も下野させた王国のあるじを、戦う前からのんでいた。

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